スマートデイズのサブリース契約と被害者オーナーの対応方法

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スマートデイズのサブリース契約と被害者オーナーの対応方法

シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営する株式会社スマートデイズ(以下「スマートデイズ」)が、シェアハウスのオーナーとの間で締結したサブリース契約に基づく賃料の支払いを履行できない事態となり、大きな社会問題となっています。スマートデイズの他にも、シェアハウスのサブリース賃料の支払いが滞る事例があり、同様の投資には注意が必要です。

本稿では、スマートデイズの事例について、シェアハウスのサブリースとはどのようなものなのか、投資のスキームを解説するとともに、オーナーがとり得る手段、特に、仮に自己破産した場合にはどうなるかを解説します。

スマートデイズの投資スキーム(サブリース契約)概要

多くのケースでは、オーナーがシェアハウスの土地建物をスマートデイズから取得し、そのシェアハウスについて、スマートデイズとの間でサブリース契約を締結します。サブリース契約の内容は、物件のオーナーが、物件の賃貸業務を運営する会社に物件を1棟まるごと賃貸し、運営会社が入居者に個別に一部屋ずつ転貸する一方、入居者は運営会社に賃料を支払い、運営会社もオーナーに賃料を支払うというものであるのが通常です。特に、オーナーと運営会社との間の賃貸については、運営会社がオーナーに長期間一定の賃料を支払うことが約束されているのが特徴です。オーナーとしては、入居者を募集して賃貸借契約を締結したり、物件の管理をしたりする業務の負担を負わずに、毎月一定の賃料の支払いを確保できるというメリットがあります。

また、多くのオーナーは、シェアハウスの取得代金を、スルガ銀行からの融資で長期間のローンを組んで調達しています。当然、その融資に際しては、シェアハウスの土地建物を担保に取られます。毎月の返済は、スマートデイズとのサブリース契約に基づき支払われる賃料が充てられることになります。この返済額と、スマートデイズから支払われる賃料の金額の差額がオーナーの“儲け”となるしくみです。

スマートデイズの現状

2017年ころから、スマートデイズから支払われる賃料が減額されるようになり、2018年に入ると、賃料の支払い自体がストップしてしまうという状況になっています。スマートデイズの資金繰りが悪化したからですが、その原因は、おおよそ次のとおりと報じられています。

まず、持続可能なサブリース契約は、運営会社が、入居者から受け取る賃料の合計額が、オーナーに保証している賃料よりも多いことが前提となります。もちろん、物件毎の採算や、入居率の時期的な変動等といった事情はありますが、運営会社の管理物件全体のトータルの収支では、入居者からの賃料の方が上回っていなければなりません。

ところが、スマートデイズは、入居率が低い物件が多く、管理物件全体でみると、上記の「オーナーに支払う賃料<入居者から受け取る賃料」の関係が逆転していました。それでもオーナーへの賃料の支払いができていたのは、前記(1)投資のスキームについてで述べた「オーナーがシェアハウスの土地建物をスマートデイズから取得し」という部分にからくりがあるからです。

スマートデイズは、シェアハウスの土地建物をオーナーに売却する際の差額で利益を出しており、これを既にサブリース契約を結んでいる物件オーナーへの賃料の支払いに充てていたというわけです。全体としてみれば“自転車操業”状態ということになり、いずれは破綻するスキームですが、オーナーに融資をしていたスルガ銀行が、新規にスマートデイズから物件を取得するオーナーへの融資をしない方針となったため、キャッシュの入りがなくなり、サブリース契約に基づく賃料の支払いができなくなったというのが現状です。

さて、そこで大変困るのがオーナーです。スマートデイズからの賃料の支払いがなくなったからといって、スルガ銀行への返済が免除されるわけではないからです。オーナーとしては、スマートデイズから支払われる賃料を当てにしてスルガ銀行に返済しているため、賃料収入がなくなると、給料等他の収入や、貯金を切り崩して返済をしていかなければなりません。しかしながら、物件の取得金額は1億円を超えていることも珍しくなく、仮に古ローンで取得したとすれば、毎月の返済を通常のサラリーマンの給料で行うことは到底無理といえるでしょう。

実際、約80名のオーナーが団結し、融資したスルガ銀行に返済をストップする旨申し入れ、スルガ銀行としても、上記のような破綻する可能性が高いスキームの投資に関して融資したことについて一定の責任を感じているのか、当面の間は差押等はしない旨回答したと報道されています。さらに、融資の契約の白紙撤回を求めているオーナーもいるようですが、法的に無効となる原因がない以上、スルガ銀行が相当思い切った救済措置をとらない限り、オーナーがスルガ銀行への返済義務を免れることは難しいといえます。

【2018.4.11追記】スマートデイズが民事再生を申立て

スマートデイズは、4月9日、東京地方裁判所に民事再生手続の申立てをしました。民事再生は、破産と異なり、事業を清算するのではなく、再建することを目指す手続です。オーナーの一部は、既にスマートデイズに対し訴訟を提起していますが、民事再生手続の開始により、進行している訴訟手続は中断されます。

今後、スマートデイズは、債務の一部をカット求め、残った債務について返済をしていく計画の案(「再生計画案」といいます)を、オーナーを含む債権者らに提示することになります。この再生計画案が可決されるには、スマートデイズに対する債権者の頭数の過半数かつ債権額で50%以上の同意が必要となります。再生計画案が否決された場合には、民事再生手続は廃止となり、会社の破産手続きに移行するのが通常です。

オーナーがスマートデイズからどの程度返済を受けられるのかは、再生計画案の内容次第となります。スマートデイズの総債権者数は不明ですが、相当数のオーナーとサブリース契約を締結していることから、債権者の頭数の過半数の同意を獲得するためにも、オーナーの納得が得られるような再生計画案が作成されるべきでしょう。どのような内容の再生計画案が提示されるのか、今後の動向か注目されます。

【2018.4.23追記】スマートデイズの民事再生申立てを却下

スマートデイズは、東京地方裁判所に民事再生手続の申立てをしていましたが、東京地方裁判所は、4月18日、この申立てを棄却し、保全管理命令を発令しました。今後、スマートデイズについては破産手続が開始されることになりますが、それまでの間は、保全管理人として裁判所から選任された弁護士が、スマートデイズの財産の管理や業務の執行をすることになります。

スマートデイズが民事再生手続の申立てをした際、オーナー向けに開いた説明会で、多くの参加者が、民事再生は認めず、速やかに破産手続が開始されることを求める様子が報道されていました。民事再生手続による弁済は、破産手続による配当よりも多くなることが必要とされていますので、経済的な観点からすれば、民事再生手続の方が有利となりそうです。それにもかかわらず、破産手続の開始を求めるのは、破産手続の中で、裁判所から選任された破産管財人の権限により、今回の問題に関する事実関係、特に、スルガ銀行がオーナーに融資をする際の事情が明らかになることで、融資をしたスルガ銀行との交渉を有利にする狙いがあるものと考えられます。オーナーにとっての一番の悩みは、スルガ銀行に対する多額の返済義務にあるからです。

一部の報道によると、スルガ銀行がオーナーに融資をする際、書類の改ざん等の不正が行われ、これにスルガ銀行担当者が関与していたそうです。仮にこれが真実だとすれば、スルガ銀行の道義的な責任は大きいといえますが、それにより直ちにオーナーが返済義務を免れるわけではありません。裁判となった場合には、融資契約を無効とし、かつ、スルガ銀行への返済が不要となるための法的な理屈や、それを立証するための証拠が必要となりますが、いずれもハードルは高いと思われます。スマートデイズの破産手続により、どのような事実関係が明らかになっていくのか、今後の動向が注目されます。

【2018.5.3追記】スルガ銀行が半数以上のオーナーと条件緩和を合意

スマートデイズのシェアハウス投資スキームでは、オーナーの多くは、シェアハウスの取得費用をスルガ銀行から借り入れていましたが、スマートデイズが破綻したことにより、その返済が困難となっています。融資の際にスルガ銀行側にも問題があったとされることから、オーナー側で、融資契約を無効にできないかとの動きがある中、スルガ銀行は、ほぼ全てのオーナーに個別に接触し、金利や毎月の返済額を大幅に引き下げることを提案、既に約300人のオーナーと合意をしたようです。

スルガ銀行と合意したのはオーナーの半数近くとみられています。合意の結果、スマートデイズが約束していた賃料収入がなくても、オーナー自身の給与等の収入で返済が可能となっているようです。ただし、元金については減免に応じていないとのことですので、オーナーにとっては、依然として重い負担が残ることになります。所有する物件の管理会社を変更する等して効率的に運用することで、返済の負担はさらに減らしたいところです。

ところで、スマートデイズは現在破産手続き中ですが、その中で、融資に際しての事実関係を解明することも求められています。判明した事実関係によっては、スルガ銀行が現時点で提案している条件が、さらにオーナーにとって有利なものになる可能性もあります。現時点での提案も、異例といえるくらいオーナーにとって有利な内容ですが、まだ合意をしていないオーナーにとっては、どのタイミングで合意をするかの見極めが重要となります。

被害者オーナーが取れる手段

被害者オーナーが取る方針としては、大きく分けて下記2つとなるでしょう。

  1. 物件で収益を上げて銀行に対する返済原資を確保する
  2. 自己破産により返済義務を免れる

物件で収益を上げて銀行に対する返済原資を確保する

オーナーとしては、まず、スマートデイズが約束どおりの賃料を支払わない以上、サブリース契約を解約する必要があります。現状、物件の借り主が賃料を支払うのはスマートデイズとなっていますので、このままではオーナーの手元にはお金が入ってこないからです。もっとも、直ちにサブリース契約を解約すると、入居者と個別に賃貸借契約を締結し直したり、物件の管理をしていく運営業務をオーナーが自ら行わなければならないことになります。他に本業をもっているオーナーにとって、このような運営業務を仕事の片手間に処理するのは事実上不可能といえるでしょう。そこで、「1.物件で収益を上げて銀行に対する返済原資を確保する」の方針をとる場合には、スマートデイズに代わりサブリース契約をする信頼できる業者を選定することといえます。

自己破産により返済義務を免れる

物件で収益を上げて銀行に対する返済原資を確保する方針をとれない場合には、自己破産により返済義務を免れることを選択することになります。これについては、次項で詳しく解説します。

被害者オーナーが自己破産するとどうなる?

自己破産は、簡単にいうと、現在持っている財産を全てお金に換えて、債権者に分配し、それで返済できない債務については棒引きしてもらうという手続です。

「全ての財産」といっても、家財道具や一定額の現預金等は手元に残しておくことができますし、家族の財産までが没収されるということもありません。その後生活していくことは十分できます。ただし、不動産については換価の対象となりますので、自宅を所有している場合には引越しをせざるを得ないことになります。これに対し、住居が賃貸物件であれば、破産手続とは関係なく居住を続けることができます。敷金を没収されることもありません。その他、株式等の有価証券は換価の対象となる他、保険も、一定額以上の解約返戻金がある場合には、返戻金相当額を破産管財人(破産者の財産をお金に換えて債権者に配当するために裁判所から任命された者。通常は弁護士)に納めないと解約されることになります。

破産後も手元に残しておける財産を「自由財産」といいますが、それ以外の財産は換価されてしまいますので、破産をご検討されているオーナーは、法律上認められている方法で、可能な限り多くの自由財産を確保できるよう、破産に詳しい弁護士に相談するとよいでしょう。

また、破産により債務を棒引きしてもらうことを「免責」といいますが、オーナーが免責を受けるには、「免責不許可事由」といって、法律に定められている事情がないことが必要となります。この点、シェアハウスに投資したことが免責不許可事由に当たるかどうかが問題となりますが、仮に当たるとしても、メインの債権者となるのはシェアハウスの取得代金を融資したスルガ銀行であり、投資のスキームについて当然理解していたであろうこと等を考慮すれば、結果として免責を受けられる可能性は高いと思われます。

オーナーとしては、所有している財産について正直に申告する等、破産手続に誠実に協力をする必要がありますが(財産隠しは免責不許可事由となる上、犯罪にもなるため厳禁です)、経済的な再出発をすることは十分可能といえるでしょう。

ところで、シェアハウスの物件については、銀行の担保が付いていますので、スルガ銀行としては競売をすることができますが、それだと市場価格よりも安くなってしまうため、実際には破産管財人を通して売却することになると思われます。買い手としては、シェアハウスの運営により収益を上げられるだけのノウハウがある事業者になると思われます。

まとめ

“被害者”が破産しなければならないというのは理不尽な気もしますが、スルガ銀行への返済の原資を確保するための現実的な手段がないのであれば、負債を免れるという点で有効な手段の一つといえます。当然ながらデメリットもありますので、各オーナーの状況に応じて専門家とも相談し、方針を決めるとよいでしょう。スマートデイズのケースではオーナーは免責を受けられる可能性が高いといえます。

シェアハウスやアパート等のサブリース契約の不履行によりオーナーが被害を被っている事案はスマートデイズのケースの他にも多くあり、今回の問題は氷山の一角であるといわれています。これから不動産投資を始めようとするオーナーの方は、サブリース契約が持続可能なものかどうかを慎重に検討する必要があるでしょう。また、既に被害に遭われているオーナーの方におかれては、ローンの返済という問題を解決するために本稿を参考にしていただければと思います。

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