滞納した家賃は回収できる!?滞納家賃の回収方法のすべて

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滞納した家賃は回収できる!?滞納家賃の回収方法のすべて

これまでの記事においては,家賃滞納者に対してオーナーが取り得る手段のうち,退去させる方法を中心に解説してきました。退去問題と並んでオーナーにとって重要なのは,滞納家賃自体の回収です。滞納が発生してから,時間が経てば経つほど,賃借人の財産が減少し回収が難しくなってしまいます。そこで,今回の記事では,滞納家賃自体の効率的な回収方法を徹底解説していきます。

滞納家賃の回収方法の概要

賃借人によって家賃の滞納が生じた場合,早期の回収に務めることが重要です。早期の回収に務めないと,滞納家賃の金額が膨らんでいくことはもちろん,差押えの対象となる賃借人の財産が減少する可能性(預貯金の引出による残高不足),転居や勤務先の変更により請求が難しくなる可能性があるためです。

回収する方法としては,まず督促状や内容証明などの(訴訟外の)交渉により,賃借人の自発的な支払を促します。自発的な支払いが望めない場合には,訴訟などの法的手続きを起こし,裁判所も交えて話し合いを行います。それでも支払わない場合には,判決を取得して,強制執行により賃借人の財産を差し押さえることになります。

早期回収や強制執行も含めた徹底的な回収を目指す場合には,不動産問題に詳しい弁護士へ相談することも検討されてよいでしょう。

交渉(管理会社や弁護士)を通じて早期回収を図る

それでは,回収手段の具体的内容についてみていきます。早期回収の観点からは,まず訴訟を利用しない交渉により,賃借人に自発的に支払ってもらうことが重要です。

通常,オーナーは管理会社に物件の管理業務を委託していることが多いところですので,その場合には管理会社を通じるなどして,滞納分を速やかに支払うよう督促状を送ることになります。併せて口頭・電話でも督促を行います。

これらの督促が功を奏さない場合には,後の法的手続も想定して,内容証明郵便により滞納家賃の支払を強く求めることになります。内容証明では,滞納家賃の合計金額と支払い期限を定めたうえで,期限内での支払がない場合には訴訟などの法的手続をもって,強制的な回収に入る旨を予告します。こういった督促の内容証明は,オーナー本人でも作成することができますが,場合によっては代理人弁護士名義で通知することができます。弁護士名義で通知を出す場合,後に訴訟になる可能性があることを賃借人が認識する可能性があり,自発的な支払がより促される可能性があります。

また,賃貸借契約書上,連帯保証人がいる場合には,そちらへの請求も検討します。連帯保証人は,賃貸借契約上生じる一切の金銭的債務について賃借人と同等の責任を負いますので,滞納家賃も支払う必要があります。したがって,賃借人に加えて連帯保証人にも督促状や内容証明による支払を求めることが有用です。

連帯保証人が家賃保証会社となっている場合には,そちらに請求を行ないます。家賃保証会社がいる場合には,滞納家賃の確実な支払が期待できますので,家賃の滞納を極力回避したいということであれば,あらかじめ付けておくことをお勧めします。

さらに,通常賃貸借契約においては賃借人から敷金が交付されることが通常です。敷金は,賃借人が物件を明け渡すときに,賃貸借契約上生じた賃借人の債務と相殺することができますので,賃借人の退去時に滞納家賃と敷金を相殺します。

訴訟を起こして強制的に回収を図る

以上の督促を通じても賃借人からの自発的な支払がない場合には,訴訟を起こして強制的に回収を図ることとなります。

訴訟を起こす(訴状の提出)

今回は,退去を求める訴訟ではなく,滞納家賃の支払を求める給付訴訟になります。賃借人が明渡を拒否しているようであれば,退去を求める訴訟も併せて起こします。

訴訟を起こすためには,裁判所に訴状を提出します。訴状には,求める判決の内容(滞納家賃の金額とその支払を求める)とそれを基礎づける事実関係(賃貸借契約の成立,滞納家賃の発生,その金額)を主張するとともに,賃貸借契約書といった証拠を添付して提出する必要があります。

訴訟の進行方法

訴訟の進行については,以前解説した建物明渡(退去)請求訴訟の手続と同様になります。訴状を提出して第1回弁論期日(概ね訴状提出時から1ヶ月先)が開かれるまでの間に,被告(賃借人)から答弁書が提出され,訴状への認否・反論や,支払方法の提案などの意向が示されます。

裁判所は,答弁書の内容を踏まえて,今後の進行を決定します。賃借人に支払の意向が示されるようであれば,具体的な滞納家賃の支払額と支払方法(分割か一括かなど)を協議の上確定させ,訴訟上の和解(当事者が譲歩して,賃借人が滞納家賃を自発的に支払うことを合意します)を成立させます。

一方で,賃借人が答弁書を提出しないなど何ら反応をしない場合や,滞納家賃の支払自体拒否する場合もあります。和解による解決は難しいと判断される場合には,判決を取得して,賃借人が持っている財産に対して強制執行をする必要があります。

和解による解決のメリット

家賃滞納のような金銭の支払請求については,判決よりも和解による解決の方がメリットが大きい場合が多いです。判決の場合には,強制執行(差押え)による回収方法しかありません(後述のように強制執行はうまくいかない場合があります)。一方で,和解の場合には保証人などの担保を付けること(賃借人及び保証人が応じた場合に限ります)や,賃借人資力が乏しい場合には一定の分割弁済を認めることによって自発的な弁済を促すことなど,柔軟な解決が可能となります。賃借人に分割での支払を認める場合には,支払期限を破った場合に備え期限の利益喪失条項(支払を怠った場合には直ちに滞納分全額を支払うことを可能とする条項)を付けることもできます。

このように,和解の方が早期かつ自発的な弁済を促すことができますので,賃借人が支払の意向を示すような場合には和解を検討してみてもよいでしょう。また,判決に対しては賃借人が控訴をするなどして,支払を引き延ばすことがありますので,訴状において仮執行宣言(滞納家賃の支払を命じる判決が出た場合,控訴された場合であっても,仮に強制執行をかけられる文言)を付けるよう請求しておく必要があります。

その他の法的手段(支払督促,民事調停)

支払催促

訴訟の他の法的手続として,支払督促という簡易な手続があります。支払督促は,簡易裁判所に対して申立を行ない,滞納家賃の支払を督促するものですが,債務者の意見を聞かずに一方的に債務名義(強制執行が可能になる)を取得できることがメリットになります。ただ,この手続のデメリットは,債務者(賃借人)が支払督促に異議を述べた場合(異議には理由は不要です)には,通常訴訟(上記3)に移行することになってしまいますので,余計な時間がかかってしまいます。賃借人におよそ反応が期待できないような場合にこの手続が有効といえますが,交渉がこじれで法的手続に移行する場合には,原則どおり訴訟を起こしたほうが良いでしょう。

民事調停

また,他の手続として,民事調停手続があります。この手続については以前の記事で解説を行なったので詳細は省略しますが,訴訟のような一方的な回収を目指すものではなく,裁判所の調停委員も交え,賃借人との話合いによって解決を図るという点に特色があります。ただし,賃借人が出頭しない場合には,意味がありませんので注意が必要です。

判決が出ても支払わない場合,直ちに債務者の財産を差し押さえる

訴訟を起こしても,和解等による解決が見込めない場合,判決を取得した上で,賃借人の財産を強制的に差し押さえること(強制執行)が必要となります。

判決が出た場合には,改めて賃借人に対して判決記載の金額の支払を求め,期限内に支払がない場合には,債務者の財産の強制執行に入る旨を警告します。この警告をもってしても支払がない場合には,実際に強制執行に入ることとなります。

強制執行によって滞納家賃を回収する場合の注意点としては,債務者である賃借人の財産をオーナー(賃貸人)側で特定しなければならない点です。したがって,債務者の財産を事前に把握しておくことが不可欠となります。

賃借人が通常の個人である場合,差し押さえる財産の典型例は,賃借人名義の預貯金口座と,賃借人の給与(会社員の場合)です。

このうち,預貯金口座については,金融機関名はもちろん,どの支店に口座を持っているかまで特定する必要があります。この点については,差押前に把握をしておかなければなりません。例えば,賃貸借契約締結時に賃借人が引落口座を申告している場合には,この口座を差し押さえることになるでしょう。その他の口座が不明な場合には,弁護士に依頼し弁護士会照会という制度を使うことによって,主要銀行(例えば,東京弁護士会所属の弁護士であればみずほ銀行,三菱UFJ銀行,三井住友銀行が対象)から,当該賃借人名義の口座があるか,どの支店に口座を持っているかの回答を得ることができます。この点で,滞納家賃回収においては,弁護士に相談・依頼するメリットが大きいところです。

賃借人が会社員であり勤務先が分かっている場合には,その所属する会社の賃借人の給料を差し押さえて,滞納家賃の支払を受けることが可能です。ただ,給料の場合,法律上差押えることができるのは,賃借人の生活に配慮して,給料全体の4分の1までとされています(例えば,給料の手取りが40万円の場合,差し押さえることができるのは10万円までとなります)。こちらについても,給与債権の相手である会社はオーナー(賃貸人)側で特定する必要がありますので,この点の事前調査が必須です。仮に入居申込書に勤務先が記載されている場合には,その会社に対して差押を試みることになります。

なお,給与の差押は,賃借人の勤務会社に家賃滞納の事実が知られることとなりますので,賃借人による自発的な弁済が強く期待できます。

原状回復費用の清算も併せて行うべき

以上,滞納家賃の回収方法を解説してきました。この問題と併せて解決しておくべき金銭関係の問題が,原状回復費用の清算となりますので,本稿にて解説します。

原状回復費用とは

原状回復費用とは,賃借人が,賃貸借契約終了により物件を明け渡す際に,物件を現状に回復するためにかかった工事・修繕費用のことをいいます。

具体的な原状回復費用の内容と,賃借人が負担すべき原状回復費用の範囲については,国土交通省が発行している「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」が参考となります。同ガイドラインによれば,原状回復費用とは「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義されます。

賃借人が負担するのは通常損耗を超えた範囲に限られる

原状回復費用といっても,賃借人が居住する段階まで復帰させるまでの費用を賃借人に負担させることはできません。

物件の通常の使用によって生じる程度の損耗・汚損(通常損耗)については,原則として賃借人に負担させることはできません。このような通常損耗まで賃借人に負担させることは通常損耗負担特約を,賃貸借契約書上設ける必要があります。さらに,この特約を設けるほかに,負担すべき通常損耗の範囲につき賃借人と明確に合意する必要があるなど,賃借人へ負担をさせるためには厳しい要件を満たすことが必要となります。

このように,賃借人が負担すべき原状回復費用は,原則として通常損耗(経年劣化,通常の使用によって汚損・損耗した部分)を超える物件の損傷・汚損や,賃借人が故意(わざと)・過失(不注意で)にて汚損した部分となります。この通常損耗を超える損耗・汚損を,特別損耗といいます。

また,次の入居者を確保するための化粧直し,グレードアップに相当する工事を行う場合もありますが,これは原状回復の範囲を超えるものですので,原則オーナー(賃貸人)負担となります。

具体的にどの個所のどのような汚損・損耗が。賃借人が負担すべきなのかは,上記原状回復ガイドラインにて補修部位(床,壁,天井など)ごとに詳細に記載がされていますので,請求の際には参考にされることをお勧めします。

原状回復費用の清算については,適切な業者にて修繕等の工事を実施した上で,賃借人が負担すべき部分の費用を賃借人に請求することになります。トラブルを避けるためには,明渡時に損耗状況と工事が必要な部位,賃借人の負担について当事者双方で確認・了解を取っておくことが必要です。また,原状回復費用の清算に際しては,預かっている敷金とも充当します。

終わりに

以上,滞納家賃(及び原状回復費用)の回収について,具体的な方法を解説してきました。滞納家賃問題は,被害の拡大を防ぐために早期に回収に着手することが重要です。お困りの場合には,不動産問題に詳しい弁護士に相談することもお勧めします。

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