不動産の共有状態を解消する方法と手順まとめ

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不動産の共有状態を解消する方法と手順まとめ

不動産の共有状態を解消する方法は、

  1. 共有者同士での話合い(協議)
  2. 共有物分割請求訴訟

の2つです

不動産を所有している方が亡くなり,相続人が複数いる場合,不動産に共有状態が発生することとなります。その他にも,生前贈与や離婚などに伴って同様の事態が発生します。しかし,この共有状態を放置しておくことは,不動産の価値が下がってしまったり,不動産の管理処分に支障が出てしまうなど,各種のデメリットを生じさせることになります。本稿では,不動産に共有状態に伴う不都合と,共有状態の解消方法のポイントについて解説します。

不動産の共有が生じる場合

不動産の共有とは,一つの不動産を「持分」という割合で,共有名義人(共有者)が持ち合っている状態のことをいいます。また,持分とは,共有者がそれぞれ持っている,不動産の所有権の割合のことをいいます。共有状態になっている不動産を,共有不動産といいます。

このような不動産の共有状態がなぜ発生してしまうのか,その理由について見ていきます。

相続時に親族(兄弟姉妹)で持ち合う

ケースとして最も多いのは,不動産を持っている方(被相続人)が亡くなり,相続によって相続人間で不動産の共有状態が発生するというものです。

被相続人は,遺言によって不動産を自由に処分することができます。例えば,遺言によって,特定の子だけに不動産を相続させるという指定ができ,その場合には不動産はその子の単独所有となり,共有状態は発生しません。しかし,遺言による指定がない場合には,相続人は法定相続分の割合にしたがって,不動産を共有することになります。例えば,相続人が子3名の場合には,相続の対象である不動産を各自3分の1の持分で共有することになります。なお,遺産分割によって生じた共有を,遺産共有といいます。このように,不動産の共有状態が起こりやすいのは,不動産について複数の相続人がいる場合で,遺言でその手当てがなされていない場合です。特に子同士(兄弟姉妹)で発生しやすく,関係が良好でない場合にはその管理や処分方法を巡って法的紛争になることもあり得ます。

その他,不動産を生前贈与することでも共有状態が発生することもあります(例えば,単独所有権のある土地について,生前に2分の1だけ子の一人に贈与する場合)。

夫婦間の協議(離婚による財産分与)で発生

夫婦間において,不動産の共有が生じるケースもあります。不動産(マイホームなど)を購入する際,夫婦でローンを組んで(ペアローン,連帯債務などの方法があります),夫婦それぞれに不動産の持分を取得させることがあり,このとき不動産について共有状態が発生します。

また,夫婦が離婚をする際には,夫婦の共有財産について財産分をすることが通例です。夫婦の共有財産を概ね2分の1ずつ分与することになります。この財産分与の際に不動産を売却せずに維持しておきたい場合,不動産の持分の一部を譲渡し,元夫婦の共有状態にすることもあり得ます。

不動産を共有しておくことの問題点

不動産の共有状態をそのままにしておくと,次のような複数の問題・デメリットが生じることになります。

共有者全員の同意がなければ売却できない

単独所有の不動産であれば,物件を賃貸に出したり,売却処分することは自由です。一方,共有不動産では,持分権者は権利行使について制約を受けることになります。権利行使のうち,共有不動産の使用や保存行為(不動産の修繕など,不動産の現状を維持する行為)は,持分があれば単独で行使することが可能です。

しかし,使用・保存を超える共有不動産の管理行為(共有不動産を賃貸に出すなど)については,共有持分者の持分の過半数の同意が必要となります。さらに,共有不動産の変更・処分行為(共有不動産の全体を売却することなど)については,共有持分者全員の同意が必要となります。

このように,共有不動産の管理や変更・処分に該当する行為については,持分者において意見が相違する場合には行なうことができません。特に,共有不動産の売却については全員の同意が必要ですので,反対者がいる場合には売却ができず共有不動産がそのまま残されてしまいます。不動産については年々固定資産税がかかりますので,負担が継続的にかかってしまうこととなります。共有不動産を独占的に利用している共有者がいる場合,利益を受けられない他の共有者との軋轢が生じかねません。

評価額が低くなってしまう

共有不動産を維持しておくことのデメリットの2点目は,共有不動産の価値が大幅に低くなってしまう可能性があることです。

上に述べたとおり,共有不動産全体を売却するためには,持分権者全員の同意が必要になります。持分権者の一人でも(それが如何に少ない持分であったとしても)反対者がいる場合には売却ができません。

一方で,共有持分者が,自身の持分だけを売却すること自体は,単独で可能です。しかし,共有持分権だけでは権利行使が制約されますので,その分価値は大幅に下落する可能性が高いのです(単純に不動産全体の評価額を持分で割った金額とはならないことに注意が必要です)。

また,遺産分割時に,被相続人(亡くなった方)が所有している不動産が他の持分権者との共有となる場合,不動産の評価額は,上記と同様に共有持分減価(2割程度といわれています)されることが通例です。

このように,不動産を共有にしておくことは,不動産の評価額を押し下げる大きな要因となってしまいます。持分権のみを売却する際の金額,遺産分割時の具体的な持分の評価額については,共有持分権の処分に詳しい不動産会社,弁護士へ相談の上,処分法を検討されることをお勧めします。

賃貸物件の場合,賃料の配分で揉める可能性

共有不動産を賃貸に出している場合,その地代や家賃の配分について共有者間(特に遺産相続で複数の子の共有となった場合)で争いが生じる場合があります。

共有不動産を賃貸して得た地代(土地)や家賃(建物)については,原則として,持分の割合に応じて分配することになります。例えば遺産相続で法定相続分にしたがって分割する場合,家賃等は均等割になります。ただ,共有発生前から第三者や子の一人が不動産を管理しているような場合,賃料の配分を拒否されトラブルになるケースもあります。また,賃貸に出す際の条件や管理事項(賃料額,敷金・保証金,修繕,リフォーム,建替など)で揉める可能性もあります。

次世代の相続で揉める可能性

不動産の共有状態を放置してしまうと,後の世代の相続でも問題が生じる可能性が高くなります。

不動産について相続が発生した場合で,特段遺言による相続の指定がなかった場合,法定相続分にしたがって,相続人全員の共有不動産となります。その上で共同相続人間で共有不動産の遺産分割を行い,共有不動産全体を売却して売却代金を分けたり,一人の相続人に所有権を集中させることになります。

遺産分割を行なわないで不動産を放置していると,遺産共有の状態が継続することとなり,場合によってはさらなる相続が発生し,共有持分がさらに細分化されてしまいます。そうなった場合の遺産分割はさらに煩雑になります。不動産の共有問題は次の世代にも悪影響を及ぼすことになりかねませんので,共有状態の早期解消は重要な課題となります。

不動産の共有を解消する手続

不動産の共有状態を解消するためにはどのような方法があるでしょうか。今回の記事では,共有解消の手続の概要を紹介し,中心となる共有物分割訴訟の手続については別稿にて解説します。

共有者同士での話合い(協議)

まずは共有不動産の持分権者同士の話合い(協議)によって。共有状態の解消を目指すことになります。協議による解消方法については,いくつかの手法があります。例えば,共有不動産全体を処分することに全員の同意が取れている場合には,不動産全体を売却して,持分に応じて売却代金を分け合うことになります。また,共有不動産が広大な土地である場合などは,現物で分ける(土地を分筆する)という方法も可能です。

一方,全体の売却や分割の方針が定まらない場合もあります。そのような場合,上記のとおり,持分権者は自身が有する共有持分のみを売却することも可能です。ただし,持分のみの売却の場合,共有状態の抜本的な解消とはならず,不動産の利用方法について大きな制約を受けるところですので(特に管理行為や処分・変更行為),共有持分の買主は共有者との交渉などの大きなリスクを背負うことになります(したがって,買手を見つけることに困難をきたす場合が多いでしょう)。

したがって,持分のみを売却する場合,全体を売却する場合に比べて売却金額は大幅に減額されることが見込まれます。持ち分の身を売却する場合には,共有関係の解消に詳しい不動産業者や弁護士へ相談することをお勧めします。

共有不動産の具体的な分割方法については,以下でも解説します。

共有物分割請求訴訟

協議によって共有状態の解消ができない場合には,裁判所の手続を取る必要があります。法的手続としては,共有物分割訴訟という特別の訴訟類型が用意されています。

共有物分割訴訟とは,共有物の分割を裁判所に求める訴訟になります。裁判所は,当事者の申立に拘束されず,共有物の分割方法を定めることができ,かつその判決には強制力がありますので,強制的に共有状態を解消することが可能です。ただし,時間がかかるなどのデメリットもあります。なお,訴訟ではなく,裁判所にて話合を行なう,共有物分割調停という手続もあります。

共有物分割訴訟を含めた共有物分割の具体的な手続については,別稿にて解説します。

具体的な不動産の分割方法

最後に,共有不動産の具体的な分割方法を解説します。

現物分割

一つ目は現物分割という手法で,原則的な共有物の分割方法となります。これは,共有不動産そのものを,持分割合に応じて現実に分割する方法です。例えば,土地を持分に応じた面積で分筆(一筆の土地を数筆の土地に法的に分割すること)します。現物分割により,それぞれの土地は各自の単独所有となります。

現物分割は原則的な分割方法ではありますが,実際にはこの方法によりにくい場合があります。例えば,共有不動産が広大な土地の場合であれば分筆は容易な場合がありますが,共有不動産がビル・マンションといった建物の場合には困難な場合が多いでしょう(ただ,各部屋が細かく分かれており,現物分割が可能な場合もあります)。

代金分割(換価分割)

現物分割が困難な場合には,代金分割・換価分割という方法もとることができます。これは,共有不動産全体を売却してしまい,その売却代金を各自の共有持分に従って,分配するというものです。売却方法としては,裁判所を通じて競売手続を行なうか,共有者全員の同意を取った上で任意売却により処分を行なうことになります。あくまで現物分割の補充的な手段とされていますが,金額できっちり分けることができますので,共有者間の不公平は生じにくいところです。ただし,売却により共有不動産は第三者に譲渡されることとなります。なお,競売による売却手続の場合,一般に売却価額は低くなる傾向にありますので,なるべく任意売却の手段を試みることが通例です。

代償分割(価額賠償)

最後の手段は代償分割・価額賠償といわれる方法です。これは,共有者の一人が,他の共有者の持分に相当する金額(代償金)を支払って,その一人の単独所有にする方法をいいます。実質的には,共有持分権者が他の共有持分を買い取るという手法になります。法律(民法)上,このような価額賠償を定めた規定はありませんが,裁判例で認められた分割方法です。ただ,共有不動産を誰が取得するのか,代償金の金額をどのようにするのか,といった点の調整が不可欠です。

終わりに

以上,共有状態がなぜ生じるのか,そのデメリット,共有状態を解消する方法の概要をみてきました。共有状態が長く続くことは,共有持分権者にとってデメリットが大きく,事態を放置していても自動的に解決することはありません。したがって,共有状態の解消に向けた早期の活動が重要となります。共有者間でまずは共有物の処分・管理について協議の場を設け,話がまとまらない場合には早期に法的手続(共有物分割訴訟)を取ることになります。もし共有不動産の問題でお困りの場合には,この問題に詳しい弁護士に相談されてもよいでしょう。

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