交通事故の被害に遭い、むちうちなど身体に痛みが残ったことで認められる後遺障害の等級は「14級9号」か「12級13号」です。後遺障害等級14級9号と12級13号は、共に身体に痛みが残った場合=局部に神経症状を残すものである点で共通しています。しかし、損害賠償請求できる金額は14級9号が250万円程度、12級13号は800万円程度と、大きく異なります。
では、どのような場合に14級9号と認定され、どのような場合に12級13号と認定されるのでしょうか。慰謝料の多い12級13号を勝ち取るポイントと、14級9号と認定されてしまった場合の対応についても解説します。
目次
後遺障害等級14級9号と12級13号の違い
後遺障害等級の「14級9号」と「12級13号」は共に神経症状に関する後遺障害等級ですが、次のように違いがあります。
比較項目 | 「14級9号」 | 「12級13号」 |
---|---|---|
認定の基準となる障害の程度 | 局部に神経症状を残すもの | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
慰謝料の相場 | 自賠責基準の場合:32万円 裁判基準の場合:110万円 |
自賠責基準の場合:93万円 裁判基準の場合:290万円 |
労働能力喪失率 | 5% | 14% |
労働喪失期間 | 3〜5年 | 10年 |
認定基準の違い
両等級の認定基準の違いは、神経症状が「頑固かどうか」です。ここでいう「頑固」というのは、痛みが強いか弱いかと言う痛みの程度ではなく、痛みの発生原因が医学的に証明できるか否かによって区別されます。
●12級13号
障害の存在が医学的に証明できるもの
●14級9号
障害の存在が医学的に説明可能なもの、あるいは、医学的には証明できなくとも自覚症状が単なる故意の誇張でないと医学的に推定されるもの
「医学的に証明できる」とは?
医師など患者本人以外の人が客観的に認識できる所見(他覚的所見)をいい、具体的には、MRIやCT、レントゲン(XPともいいます)等の画像所見や、神経学検査所見等から医学的に見て痛みの原因が証明できることを指します。
慰謝料の違い
獲得できる慰謝料は、裁判基準で14級9号が110万円、12級13号が290万円です。両等級による金額の違いは2倍以上となっています。
逸失利益の違い
交通事故前年度の年収が400万円のサラリーマンが追突被害事故にあったケースを例に、両等級による逸失利益の違いをみてみましょう。
●14級9号と認定された場合の逸失利益
基礎収入:400万円
労働能力喪失率:5%
ライプニッツ係数:4.3295(労働能力喪失期間5年)
計算式:400万円×5%×4.3295=86万5900円
●12級13号と認定された場合の逸失利益
基礎収入:400万円
労働能力喪失率:14%
ライプニッツ係数:7.7217(労働能力喪失期間10年)
計算式:400万円×14%×7.7217=432万4152円
このように、両等級による逸失利益の違いは5倍近くになります。慰謝料も合わせれば両等級による損害賠償金の総額の違いはより大きい額になります。
12級13号の等級認定を受けるためのポイント
MRIやCT、レントゲン(XPともいいます)といった画像所見や、神経学検査所見等によって、交通事故による痛みであることを証明するためにはいくつかのポイントがあります。
例えば、骨折すれば当然レントゲン画像に映るので、骨折して痛みが残っていれば12級13号に該当するということになるのでしょうか?
この答えは「No」です。
骨折して痛みが残っていても、骨癒合が良好であれば「痛みの原因が証明できる」とはいえず、12級13号にはあたらないと判断されてしまうのです。
そのようなことにならないために、以下のような準備が必要です。
レントゲン撮影に加えて、MRI撮影を行う
レントゲンは骨しか映らず、痛みの原因となる神経が映りません。そのため、レントゲンのみでは骨折と痛みの関連性を証明できず、12級13号に該当しない、と判断されてしまいます。まずは神経が撮影されるMRIで撮影を行うことが非常に重要です。
理想的なMRI撮影回数
交通事故直後、中間、症状固定直前の3回、MRI撮影することが望ましいです。この3回のMRI撮影画像があると、交通事故直後の一番ひどい状態が記録されるとともに、その状態からどのような経過で回復しているかがわかります。また、交通事故当初の症状と比較して、症状固定直前になってもどの程度症状が残存してしまっているかがわかるのです。
後になってから遡ってMRI撮影することはできないため、適切な時期に撮影しておくことが重要です。
理想的なMRI撮影機器
MRI機器にもグレードがあり、グレードが高いMRI機器で撮影するとより精細な画像になり、痛みの原因の証明につながることがあります。実際に、1.5テスラのMRIでは痛みの原因が明らかにならなかったが、3テスラでMRIを再度撮影したところ精細な画像で痛みの原因が証明され、12級13号の認定を受けることができたという事例があります。
後遺障害診断書に残存症状を記載してもらう
後遺障害等級申請を行う際に必要となる後遺障害診断書に、症状として残存している痛みや痺れについて明確に記載してもらう必要があります。痛みや痺れがあるのに後遺障害診断書に記載がないと、その痛み・痺れはないものとして扱われてしまいますので必ず記載してもらいましょう。
それでも14級9号の認定がされた場合の対応
以上のような準備をして後遺障害等級認定を申請しても、14級9号に止まるという結果が出ることがあります。そのような場合には、異議申立てという手続で再度等級認定の申請をすることができます。
異議申立て手続きのポイント
異議申立てというのは、以前等級結果を判断した損害保険料率算出機構に対して、「この結果はおかしいので、再度判断してください。」と申請する手続きです。同じ機関に申請するわけですから、同じ資料を送って申請をしても同じ結果が出てしまいます。そこで、新たな資料を準備して異議申立てをすることが必要となります。
医師による等級結果についての意見書を入手する
交通事故直後から診察していた主治医に、等級結果についての意見書を作成してもらい、損害保険料率算出機構に提出する方法があります。意見書の内容は、当然ながら14級9号ではなく、12級13号に該当するという内容になり、こちらの意見書を基に機構に再検討を促します。
主治医が意見書を作成してくれない場合や、医療鑑定を積極的に行っている医師に意見書を作成してもらうこともできます。医療鑑定の結果に基づいて意見書を作成してもらいましょう。