営業職など要注意職種は3つ!「みなし残業代」でも残業代請求はできる?

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営業職など要注意職種は3つ!「みなし残業代」でも残業代請求はできる?

「うちの会社は『みなし残業代』にしているから、残業代は請求できない」という話を聞いたことはないでしょうか。それどころか、ご自身の会社がそのように説明していて、残業代を支払っていないという方もいらっしゃるかもしれません。確かに、法律上の制度が正しく運用されている場合には、会社から支払われる給料の他に残業代を請求することはできないということになります。しかしながら、法律上は、制度を導入できる場合は限られており、そうでない場合には会社が「みなし残業代」を採用したとする賃金規定が無効となり、通常どおり残業代が発生することになります。

本稿では、「みなし残業代」と呼ばれる制度について詳しく解説するとともに、これが正しく運用されておらず、残業代を請求できる可能性が高い職種について、どのような点に気をつけて残業代請求をすればよいのかを解説します。

「みなし残業代」の現状

「みなし残業代」という言葉は、例えば「月に40時間残業をするものとみなして、その分の残業代として基本給とは別に10万円を支払う」という残業代の支払方法を指すものとして使われることもあります。これは、いわゆる「固定残業代」とか「定額払い」という制度で、本稿で扱うものとは異なります。「固定残業代」や「定額払い」の場合にも、残業代請求の可能性がありますが、この点は別稿に譲ります。

本稿では、例えば「実際の労働時間が9時間以上だったとしても、9時間労働したものとみなす」というように、実際の労働時間に関わらず、労働時間を一定にみなすという「みなし労働時間制」について解説します。

さて、「みなし労働時間制」はどのような場合でも認められるわけではなく、実際の労働時間を基準として残業代を算定することが適当でない場合に認められる例外的な制度です。そのため、法律上必要とされる要件を充たす場合のみ「みなし労働時間制」は有効となるのですが、これを充たさないにもかかわらず制度を導入しているケースが少なくないのが現状です。このような場合には、「みなし労働時間制」は無効となり、原則どおり、実際の労働時間を基準として残業代が発生することになります。

「みなし労働時間制」のうち、特に残業代請求の可否が問題となるのは、「事業場外みなし労働時間制」と、「専門業務型裁量労働みなし労働時間制」です。どのような場合にこれらの制度は有効となるのでしょうか。法律上必要とされる要件は次のとおりです。

みなし労働時間制の要件

みなし労働時間制の要件

事業場外みなし労働時間制

  1. 「事業場外」で労働したこと

    会社のオフィスや工場等の外で労働をしたことが必要です。事業場の中か外かという点は明確に判断できるため、この要件が問題となることはほとんどありません。

  2. 労働時間の算定が困難であること

    事業場外で労働をする場合であっても、会社側で労働時間を把握し、算定することが可能であれば、この要件は充たさないことになります。

それでは、どのような場合であれば、労働時間の算定が困難といえるのでしょうか。裁判例を分析すると、会社側からの業務に関する指示、労働者側からの報告が重視されているようですが、現代では、携帯電話が普及しているため、指示や報告は容易に行うことができます。そのため、携帯電話が使えないような僻地への出張など、極めて限られた場合でなければ、「労働時間の算定が困難であること」の要件は充たさないと考えられています。

裁量労働みなし労働時間制

  1. 対象業務が、業務の性質上その遂行の方法を大幅に当該業務に従事する労働者の裁量に委ねる必要があるため、当該業務の遂行の手段及び時間配分の決定等に関し使用者が具体的な指示をすることが困難なものとして、厚生労働省令で定める業務であること

    具体的には、研究職、システムエンジニア、記者、デザイナー、放送番組のプロデューサー・ディレクター、コンサルタント等が該当するとされていますが、これらの業務であっても、付随業務や補助業務については、この制度は適用されません。業務の裁量性がないからです。

  2. 労使協定を締結していること
  3. 就業規則又は労働協約の定めがあること

2、3については形式上整備されているとしても、上記のとおり、裁量性のない労働者についてもこの制度を適用している会社は少なくありません。また、この制度の対象外となる業務についても相当時間担当させていた等の事情により、この制度が適用されないと判断された裁判例もあります。

みなし残業代があっても残業代を請求できる?

みなし残業代があっても残業代を請求できる?

みなし労働時間制が適用されないとどうなる?

みなし労働時間制の適用が否定されると、原則に戻り、実際に仕事をしていた時間に応じて残業代が発生することになります。単純化した事例として、みなし労働時間として1日9時間とされており、実際には12時間働いていた場合には、4時間分の残業代を請求できることになります。

ただし、この場合には、実際に労働していたことの立証が必要となります。タイムカード等の客観的な資料があるのがベストですが、みなし労働時間制を採用していたという建前上、タイムカードがないというケースも少なくありません。そのような場合には、会社が作成に関与している日報や、メールの送受信時間、警備システムの記録等、可能な限り客観的な資料を揃えられるようにしたいところです。

営業で外回りをする方

事業上外みなし労働時間制が採用されている可能性があります。その場合、会社から携帯電話の貸与を受ける等して出先でも連絡がとれる状態とされていたのであれば、労働時間の算定が困難であるとは認められず、みなし労働時間制の適用を否定できる可能性が高いといえるでしょう。

コンサルタントの方

裁量労働みなし労働時間制が採用されている可能性があります。その場合、例えば、プロジェクトのチーフを務めているのではなく、そのチーフの下で管理されて仕事をしているのであれば、裁量性がないものとして、みなし労働時間制の適用を否定できる可能性があります。このようなケースでは、実際の労働時間を立証する証拠に加え、裁量性がなかったといえる事情についても証拠となる資料が必要となります。自分の仕事がプロジェクトの中のどのような位置づけだったか等、事案に応じた主張・立証が求められます。

システムエンジニアの方

裁量労働みなし労働時間制が採用されている可能性があります。その場合、システムの設計に関わらず,上司の指示どおりにプログラムを作るだけというように裁量性に乏しい業務内容であれば,みなし労働時間制の適用を否定できる可能性があります。この場合にも、実際の労働時間の立証に加え、裁量性がなかったことの事情を主張・立証する必要があります。

まとめ

みなし労働時間制は、会社が残業代を抑制する手段として誤って運用されていることが多くあります。時間外労働をしているにもかかわらず、「みなし残業代」等の理由により残業代が十分支払われていないとお考えの方は、みなし労働時間制の要件を充たしているかどうか確認されることをおすすめします。

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