残業代請求にかかる費用は?知っておきたい弁護士費用の相場

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残業代請求にかかる費用は?知っておきたい弁護士費用の相場

残業代請求にかかる費用は、大きく分けて、手続にかかる費用(実費)と、弁護士に依頼した場合にかかる弁護士費用の2つとなります。弁護士費用は、実費に比べるとずっと多額となるのが通常です。そのため、弁護士に残業代請求を依頼するかどうかを決めるに当たり、弁護士費用の金額は大きく影響することになります。

以下、実費と弁護士費用について、詳しく解説します。

残業代請求にかかる実費

残業代請求は、まず会社と交渉をし、それで解決できない場合には裁判所での労働審判や訴訟という法的手続をとるというプロセスで進むのが通常です。また、労働審判や訴訟により会社に対し残業代等の支払命令が得られた場合でも、会社がこれに従った支払いをしない場合には、強制執行という手続により、会社の財産を差し押さえて回収することになります。

これらの手続の段階ごとに、どのような実費が必要となり、どれくらいの金額となるかについて、以下解説します。

会社との交渉

会社に残業代請求をする場合には、内容証明郵便により通知するのがセオリーです。

残業代請求権は2年で時効により消滅してしまうため、特に2年以上残業をしていた方については、何もしないと毎月1か月分の残業代請求権がなくなっていってしまうことになります。これを防ぐため、まずは請求により6か月間時効を停止させますが、その証拠を残すために、信用性の極めて高い方法である内容証明郵便を使うというわけです。内容証明郵便を送付する場合には、2,000円前後の費用がかかります。

その他に、どんな案件でも必須となる費用はありませんが、会社の担当者や代理人と交渉する際の交通費等や、最初の請求以降、文書でやり取りする場合の通信費がかかることになるでしょう。

労働審判

交渉で解決ができない場合には、労働審判か、後記訴訟のいずれかの手続をとることになります。また、労働審判で解決できない場合には、手続が訴訟に移行します。

労働審判を申し立てる際には、手数料としての収入印紙と、郵便切手が必要になります。収入印紙の額は請求する金額により、請求額が多くなるほど高くなります。例えば、100万円請求する場合には5,000円、300万円請求する場合には10,000円、500万円請求する場合には15,000円となります。郵便切手については各裁判所により運用が異なり,内訳も細かく指定されていることがありますので,申立てを行う裁判所に確認しましょう。なお,東京地方裁判所では,相手方に送付する書類の重量に、裁判所作成書面分として50グラムを加えた重量に対応する普通郵便料金とされています。

訴訟

交渉で解決できない場合に、法的手続として労働審判ではなく訴訟を選択する場合にも、収入印紙と郵便切手が必要となります。収入印紙の額が請求する金額によることは労働審判と同様ですが、訴訟の方が高額です。100万円請求する場合には10,000円、300万円請求する場合には20,000円、500万円請求する場合には30,000円となります。また、郵便切手についても労働審判と同様に各裁判所により運用が異なります。東京地方裁判所では、6,000円を予納することとされており、内訳は、500円×8枚、100円×10枚、82円×5枚、50円×5枚、20円×10枚、10円×10枚、2円×10枚、1円×20枚となっています(2017年10月現在)。

労働審判から訴訟に手続が移行した場合には、収入印紙については、上記の額と、労働審判申立時に納めた額の差額分が必要になります。100万円請求する場合、必要な印紙の額は労働審判では5,000円、訴訟では10,000円ですので、差額の5,000円を追加で納めることになります。また、予納する郵券については上記と同じです。

残業代請求にかかる弁護士費用

残業代請求にかかる弁護士費用

弁護士費用の相場は?~旧日弁連報酬等基準について

残業代請求に関する弁護士報酬に相場というものはあるのでしょうか。

かつて弁護士の報酬については「日弁連報酬等基準」という基準が定められており、その範囲内で弁護士報酬が決められていましたが、平成16年4月からはこの基準が撤廃され、弁護士報酬は自由化されています。そのため、弁護士事務所毎に独自の報酬体系が定められるようになり、特に残業代請求事件では、着手金を無料とする完全成功報酬制を採用する事務所が多くなっているようです。

ただし、弁護士報酬について旧日弁連報酬等基準(以下「旧基準」といいます。)は、残業代請求事件に限らず、幅広い分野の事件で弁護士報酬の参考とされていますので、この旧基準が、弁護士報酬の“相場”としてある程度参考になるといえます。事務所独自の報酬体系を検討する際、旧基準を比較してみると、割高かどうかが判断できるかもしれません。

旧基準によると,弁護士費用は次のとおりとなります。

着手金

経済的利益の額 金額
300万円以下の場合 8%
300万円を超え3,000万円以下の場合 5%+9万円
3,000万円を超え3億円以下の場合 3%+69万円
3億円を超える場合 2%+369万円

成功報酬

経済的利益の額 金額
300万円以下の場合 16%
300万円を超え3,000万円以下の場合 10%+18万円
3,000万円を超え3億円以下の場合 6%+138万円
3億円を超える場合 4%+738万

ただし,上記のとおり現在はそれぞれの弁護士が独自に報酬体系を定められますので,自分のケースでは弁護士報酬の総額がどれくらいになるかを正確に理解した上で、旧基準と比較するようにしましょう。例えば,着手金が無料で、持ち出しがなく手続が進められるというのは大きな魅力ですが、請求金額が大きくなるケースでは、成功報酬の割合が高いと、トータルの弁護士費用は割高になってしまうこともあります。

弁護士報酬は、着手金+成功報酬が基本となっており、その他日当等の費用がかかります。以下、それぞれについて,残業代請求事件における弁護士報酬の特徴を解説します。

着手金

着手金とは、まさに弁護士が依頼された仕事に着手する際に支払いを受ける弁護士報酬のことです。残業代請求事件に限らず、着手金は、事件の処理がうまくいってもいかなくても、つまり最終的に残業代を満足に回収できなかったとしても、依頼者に返還しないのが通常です。

残業代請求事件では、労働者側である依頼者に資金的な余裕がないことも多い一方、残業をしたことの証拠が揃っているケースでは勝訴できる見込みが大きいため、着手金を無料または旧基準に比べて低い金額で一律とする報酬体系の事務所が多くなっています。

ここで注意したいのが、追加の費用が発生しないかという点です。残業代請求は、交渉→(労働審判)→訴訟という順番で進みますが、交渉の段階で支払った着手金が、労働審判や訴訟となる場合に増額されないかについて、よく確認しておきましょう。

成功報酬

成功報酬とは,弁護士が依頼された仕事が成功した場合に限り支払いを受ける弁護士報酬のことです。多くの場合には、依頼者が得た経済的利益の何%というかたちで定められています。残業代請求事件では、着手金を無料ないし低めの一律金額とする一方、成功報酬については旧基準よりも高い割合とし、かつ、金額が増えても割合が下がらない体系としている事務所も少なくありません。成功報酬は回収した残業代の中から支払われるのが通常ですので、依頼時に資金繰りの心配をしなくていいのは助かりますが、請求金額が大きくなる見込みのケースでは、慎重に考えた方がいいかもしれません。また、着手金+成功報酬型か、完全成功報酬型かを依頼者が選択できるとしている事務所もありますので、自分のケースではどちらがお得かを弁護士に相談してみるのもよいでしょう。

その他の費用

出張の際の日当・交通費

着手金や成功報酬のほかにかかる費用としては、弁護士が遠方に出張する際の日当が挙げられます。

これも、旧基準では、半日だと3万円以上5万円以下、一日だと5万円以上10万円以下と定められていましたが、現在では、出張する場所によって細かく分類するなど、事務所によって独自の基準が定められています。依頼する弁護士が出張しなければならない場合には、事件が解決するまでにかかる日当の見込額も考慮する必要があります。残業代請求事件では、労働審判で解決できれば出廷回数は3回以内となりますし、訴訟の場合にも電話会議システムを利用することで出廷回数を削減できることがあります。依頼時に出張の回数を正確に予想するのは難しいですが、争点や会社の対応等を正確に弁護士に伝えることで、ある程度見積もりは立てられるかもしれません。日当の見込額が大きくなりそうであれば、手続を行う裁判所の近隣の事務所に依頼することを検討しましょう。

また、日当が発生する場合には、出張の際の交通費等の実費も依頼者の負担となるのが通常です。その際の交通手段、具体的にはタクシーやグリーン車等の使用の条件についても、出張の回数によっては予想以上に大きな金額となる場合がありますので、チェックをしておくことをおすすめします。

残業代の計算手数料

残業代請求事件では、残業代を請求する労働者側が、まず残業代を計算しなければなりません。この計算にはある程度手間がかかるため、その手数料を着手金・成功報酬とは別に依頼者に請求する事務所も少なくありません。それほど高額にはならないのが通常ですが、念のため依頼する前に確認しておくことをおすすめします。

まとめ

残業代請求には、手続費用と弁護士費用がかかりますが、弁護士費用については、残業代請求の弁護士費用のとおり、報酬基準が様々で、総額でどれくらいになるのか、プランを選択できる場合、どのプランが自分にとってお得なのか、分かりにくいことも珍しくありません。そこで、依頼する前の相談段階でしっかりと確認し、多額の費用がかかってしまって手取額が思っていたよりも少なくなってしまった、ということがないようにしたいものです。

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