不動産オーナー必見!家賃滞納者への対処方法のすべて

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不動産オーナー必見!家賃滞納者への対処方法のすべて

近時,投資用不動産のニーズの高まりに応じて,不動産オーナーが物件を貸し,賃借人から家賃収入を得るケースが増えています。ただ,残念ながら賃借人とのトラブルも増加傾向にあり,その中でも最も多い類型が,賃借人による家賃(賃料)の滞納問題となります。

不動産オーナー(賃貸人)は,家賃滞納者(賃料滞納者)が出てきた場合に,どのような法的手段を取ることができるのでしょうか。本稿では,家賃滞納者に対して取り得る,①賃借人の物件からの退去,②滞納家賃の回収の2つの手段について徹底解説します。

家賃滞納者を退去させる

まず考えられるのが家賃滞納者を退去させることです。

契約違反で賃借人を退去させられる!

家賃滞納者に対しては,賃貸借契約違反で賃貸物件から賃借人を退去させることが可能です。

賃貸借契約とは,①賃貸人(オーナー)が物件を賃借人に利用(使用収益)させること,②賃借人がその対価として一定の期間ごと(通常は毎月)に家賃を支払うこと,の2点を約束することによって成立する契約です。

賃借人は,賃貸借契約上,毎月賃料の支払義務(債務)を負うことになります。そして,賃借人が契約上の支払期限までに家賃を支払うことができなかった場合,賃借人には賃貸借契約の債務不履行(契約違反)が発生します。

契約の一方当事者(賃借人)において債務不履行が生じた場合には,契約の拘束力から他方当事者(オーナー)を解放させることが必要となるため,民法等の法律によって,賃貸借契約を解除(一方的に終了)させることができます。これにより,賃借人はその物件に居住する権原がなくなり,退去させることが可能となるのです。

なお,賃貸借契約を正式に解除するためには,賃料の滞納があることに加え,一定の要件(賃貸人と賃借人の信頼関係が破壊されたこと。背信性といいます)も必要となります。

滞納期間が長引くことによって大きな経済的損失が生じてしまう=早期解決が重要

家賃滞納の事態が生じた場合には,オーナー側において退去をさせるかどうかを判断の上,素早くアクションを起こすことが重要となります。

滞納期間が長引けば,その分だけ滞納家賃が毎月増額することとなります。最終的には法的手段をもって滞納家賃の回収を試みることは可能ですが,賃借人が自発的に支払わない場合には,オーナー側で法的手続として預貯金などの資産の差押えを行なう必要があります。しかし,そのためには,複雑な手続を経なければならず,時間もかかります。さらに,差押をしても賃借人に十分な財産がない場合には,回収ができなくなってしまいます。

滞納期間が長引けば長引くほど,オーナーのリスク・損失は大きくなります。滞納家賃が発生すればする分だけ,その分回収のリスクが残り,回収不可能となった分は損失となってしまいます。

したがって,早期に賃借人を退去させ,新たな賃借人を物件に入れて家賃収入を獲得していくという観点が重要であり,そのための素早い判断・行動が必要となります。

当事者本人で退去の可否の判断や話を進めるのは難しい場合もありますので,弁護士などの専門家を選任して交渉や法的手続を代理してもらうことも検討してもよいでしょう。弁護士が介入して早期の退去が実現できた場合には,問題が長期化し毎月増加する滞納家賃額を比較してより経済的な解決となることもあります。

例えば,本来1年かかる交渉を専門家を入れて3か月で退去に成功した場合には,家賃合計9ヶ月分の経済的な利益が生じますので,弁護士費用などの諸経費を考慮しても,費用的には安く済むことになります。

退去させる具体的手順~交渉から強制執行(明渡の断行)まで

賃借人を退去させるための具体的な順番としては,法的手続の前に交渉で賃借人に自主的な退去を求め,その後に法的手続による強制退去を目指すことになります。

まずは,家賃滞納を発生させた賃借人に対して,内容証明や督促状を送り,家賃滞納を原因とする賃貸借契約の解除を通知し,期限を区切って退去するよう請求します。通知を行った後は,賃借人と自発的な退去に向けて交渉・説得を行います。賃借人が自発的に退去するということになれば,必要な処理(立退合意書の作成など)を行なった上で,物件からの退去を実現します。

通知を送った後も賃借人が退去しない場合には,法的手続を利用することになります。具体的には,裁判所に建物明渡請求訴訟を起こします。

訴訟を起こした後は,賃借人の言い分も聞きつつ,訴訟上の和解(当事者が互いに譲歩しながら退去を合意することで,紛争を解決すること)か判決(裁判所が一方的に賃借人に物件からの退去を命じることで,紛争を解決すること)のいずれかの方法で退去を実現します。費用や時間の節約になることから,まずは和解による自主的な退去を目指すことになるでしょう。

さらに,仮に判決を取得しても賃借人が退去しない場合には,裁判所に対して強制執行(明渡の断行)の手続を取る必要があります。裁判所の執行官と物件に赴いた上で,強制的に賃借人の占有を解き,退去を実現させます。

仮に判決を得て強制執行まで手続を進めざるを得ない場合には,早いケースであっても4ヶ月から6ヶ月程度の期間が必要となります(1年以上かかるケースもあります)。やはり,早期解決のためには,法的手続を起こす前に賃借人に自発的に退去してもらうことが重要です。

滞納家賃を回収する

家賃滞納が発生した場合にオーナーが取れる2つめの手段は,滞納家賃の回収です。

早期かつ徹底的な回収が重要!

滞納家賃が発生した場合には,その分得られるはずの家賃収入が減少することになります。滞納月数が伸びればその分被害が拡大することになりますし,賃借人からの自発的な回収も難しくなり回収リスクは大きくなっていくでしょう。したがって,上記の退去と同様,回収に向けた早期の判断と行動が重要となります。

滞納家賃の回収について自発的な支払が望めない場合には,賃借人の有している財産(預貯金や給与)の差押えを通じて,徹底的な回収を行なうことが必要です。
その他の方法として,賃貸借契約上,連帯保証人や家賃保証会社が付いている場合には,こちらからの回収も考えるべきです。

滞納家賃の回収に際しては早期解決を念頭に置き,強い態度で回収に向けて活動を行なっていくことが重要となります。

滞納者には追加の支払や差押えなどのリスクがある

家賃滞納を生じさせた賃借人には,以下のリスクが生じます。家賃の支払は,賃貸借契約上の法的な義務ですが,この支払を怠った場合には,民法に定める所定の遅延損害金(年5%)を滞納解消時まで支払う必要があります。

また,差押え(強制執行)の手続を取られることによって,賃借人の財産を没収されるというリスクがあります。特に,賃借人が会社勤めの場合,その給料(給与債権)が差押えられ,会社に差押えの事実が発覚するなど大きな不利益を被ります。

オーナーとしては,賃借人に対して上記リスクが発生することを伝え説得し,賃借人からの自発的な回収に努めていくことになります。

回収のための具体的な手法~交渉から差押えまで

まずは,内容証明(督促状)にて,滞納賃料合計額を伝えるとともに,支払期限を定めて速やかに支払をするよう強く求めていきます。賃借人から自発的に支払う旨の意向が示された場合には,支払合計額と支払方法(一括か分割か)を確定させて,支払に関する合意書を作成し,支払を受けていきます。また併行して,連帯保証人(や家賃保証会社)に対しても請求を行ない,回収を図ることもできます。

内容証明による通知とその後の交渉で自発的な支払がない場合には,法的手段を利用する必要があります。具体的には,賃料等支払請求訴訟を起こして,未払賃金と遅延損害金の全額の支払を求めます。なお,滞納賃料の支払と併せて,賃貸借契約の解除に基づき退去を求めることも可能です。

訴訟を起こした後は,退去と同様に,判決か和解による解決を目指すことになります。賃借人に資力がない場合など,一定の分割払を認める和解を選択する方が最終的な回収の観点からは良いこともあります。

和解が成立しない場合には,裁判所が賃借人に対して滞納家賃等の支払を命じる判決を取得することとなります。そして,判決を取得した後も賃借人が自発的に支払わない場合には,強制執行(差押え)を行なわなければなりません。

滞納家賃の回収の強制執行の場合には,債務者である賃借人の保有する財産を特定した上で,その財産を差し押さえて滞納分の金銭を回収していきます。差押えを行なう財産としては,賃借人が有する各種金融機関の預貯金,また賃借人が勤務している会社の給与が例として挙げられます。

強制執行までの手続はかなり複雑であり時間や費用もかかることから,可能な限り賃借人に自発的に支払ってもらう方が望ましいでしょう。具体的な滞納家賃の回収方法については,さらに別稿で解説を行なっていきます。

まとめ

以上,家賃の滞納が発生してしまった場合に,不動産オーナーが取り得る2つの手段(物件からの退去,滞納家賃の回収)について解説してきました。家賃滞納問題を解消しない限り,滞納分が継続的に発生し次の入居者から家賃を得ることができず,不動産オーナーに大きな経済的損失が発生してしまいます。したがって,退去や回収可能かどうかの判断と対応を速やかに行う必要があります。

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