倒産した会社の社長が罪に問われる場合は?刑事責任を負わないために

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倒産した会社の社長が罪に問われる場合は?刑事責任を負わないために

2017年3月、旅行代理店の「てるみくらぶ」が、2018年1月、振袖の販売・レンタル、着付け、フォトスタジオ等を運営する「はれのひ」が倒産しました。これらは、多数の一般消費者の顧客に被害が出たことなどから社会的な影響の大きい倒産事件として、広く報道されています。さらに、「てるみくらぶ」の社長は詐欺罪で逮捕され、「はれのひ」の社長についても警察による捜査が行われており、刑事事件としても今後の展開が注目されています。

本稿では、どのような場合に倒産した会社の社長が罪に問われるのかを解説するとともに、会社を倒産させる際、刑事責任を負わないために気をつけるべきことを解説します。

会社の倒産に際し社長が刑事責任を負う場合

まず、倒産する会社の社長のすべてが刑事責任を問われるわけではなく、実際に警察による捜査が行われるのはごく少数のケースに限られます。会社の決算を粉飾していることで何らかの刑事責任を負うのではないかと心配される方もいらっしゃいますが、粉飾が直ちに犯罪になる訳ではありません。

では、どのような場合に、刑事責任を問われるのでしょうか。会社の倒産に際し、社長が気をつけるべき犯罪について、個別に確認していきましょう。

詐欺罪

詐欺罪は、人を騙して財産を交付させた場合に成立し、10年以下の懲役に処せられます(刑法246条1項)。会社の破産に際して問題となる場合としては、破産をすることが確実であるにもかかわらず、会社の決算書を粉飾し、返済ができるように銀行の融資担当者に説明するなどして、融資を受けたり、取引先に代金を支払うように見せかけて、あるいは破産をすることを隠して、普段どおり掛けで仕入れをしたりするケースが考えられます。

重要なのは、取引の時点で「人を騙す」という意図があったかどうかです。銀行への返済ができなかったり、仕入代金を支払えなかったりしたとしても、取引の時点では破産の方針を決めておらず、返済するつもりであったのであれば、詐欺罪は成立しないことになります。

業務上横領罪

業務上横領罪は、業務上占有している物を自分のものとして着服した場合に成立し、10年以下の懲役に処せられます(刑法253条)。会社の破産に際して問題となる場合としては、本来顧客等に返さなければならない財産を勝手に処分する等するケースが考えられます。

また、会社の財産と社長個人の財産は厳密には別物ですので、会社名義の財産であっても、社長個人が、役員報酬や貸付金の返済等、正当な理由がないのに私物化してしまったような場合も、業務上横領罪に問われる可能性があります。会社の株式を100%社長が所有しているといった事情があれば別ですが、会社の規模が小さく、会社の財産と社長個人の財産の区別がしっかりとされていないケースでは注意が必要です。また、貸金の返済を受ける場合にも、横領にはならないとしても偏頗弁済とされる可能性が高いため、慎重に行う必要があります。

詐欺破産罪

詐欺破産罪にはいくつかの類型がありますが、破産する会社の社長が特に注意すべきなのは、財産の隠匿・損壊です。これを行うと、10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金に処せられます。懲役と罰金の両方が科せられる場合もあります。

破産をする場合には、原則として全ての財産を破産管財人の管理下におかなければならないのですが、今後の生活等を考えると、少しでも財産を手元に残しておきたいという動機がはたらくのは当然のことかと思います。しかしながら、このように財産を隠して破産手続を進めることは詐欺破産罪という犯罪になる上、社長個人の免責手続においても、免責不許可事由にあたり負債のカットが認められなくなってしまうおそれがありますので、厳に慎まなければなりません。

刑事責任を負わないために気をつけるべきこと

顧客や債権者を騙して債務を増やさない

当然のことですが、破産をすることが確実となり、代金の支払いや商品やサービスの提供ができなくなるのが分かっていながら契約をしてはいけません。前記1.(1)どのような犯罪に該当する可能性があるかで解説したとおり、詐欺罪に該当する可能性があるほか、実際に逮捕されたりしなくても、顧客としては騙されたと感じ、破産手続が始まった後もクレームがきて申立代理人や破産管財人の業務に支障をきたすおそれがあります。特に、金額が大きい場合には債権者集会で説明を求められることもあります。

この点、確かに、破産の方針を決めた以上は、なるべく迷惑をかけることになる債権者が少なくなるよう気をつけなればなりませんが、他方、直前まで従業員にも破産申立てについて明かすことができないケースでは、受注・発注をいきなり止めると従業員や取引先に破産申立ての方針を察知されてしまうという可能性があります。このようなケースでは、債権者への影響を抑えることと、情報漏れを防ぐことについてジレンマが生じ、これをどのようなバランスで調整するかは極めて難しい問題となりますので、手続を依頼する弁護士の指示に従うようにしましょう。

財産の保全に気をつける

顧客等から預かっている資産は破産手続の中で管財人を通して返還されることになります。これを勝手に処分してしまうと、前記1.(1)どのような犯罪に該当する可能性があるかで解説したとおり、業務上横領罪に問われる可能性があります。また、会社所有の物件も、管財人により換価され配当の原資となりますので、散逸しないよう保全する必要があります。

社長個人の財産についても、自由財産として手元に残しておけるもの以外は管財人に引き継がなければならず、隠匿等をすると、前記1.(1)どのような犯罪人該当する可能性があるかで解説したとおり、詐欺破産罪となる上、個人の免責も受けられなくなるおそれがあります。社長個人も会社と同時に破産する場合には、個人の財産もしっかりと保全しなければなりません。

この点、自由財産として認められている枠を最大限活用して、破産後も手元に残しておける財産を増やす方法がとれる場合もありますが、専門性が高く、裁判所の運用にも左右されますので、破産手続を依頼した弁護士とよく相談した上で実行し、かつ、破産管財人にもきちんと報告するようにしましょう。

まとめ

以上のとおり、会社の破産に際し、刑事責任に焦点をあてて社長が気をつけるべきことを解説しましたが、破産手続に詳しい弁護士に依頼し、その指示どおりに準備を進めれば、社長が罪に問われることはないのが通常です。ただし、相談する前に行ったことについては弁護士としてもどうしようもありませんので、会社の破産を検討している社長は、弁護士に依頼するまでは、本稿を参考にして慎重に財産を扱っていただければと思います。

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