会社の倒産について知っておきたい3つのこと

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会社の倒産について知っておきたい3つのこと

会社の業績が悪化し、容易には改善できない見通しとなった場合、最悪のケースとして考えられるのが倒産です。しかし、「倒産」という言葉は日頃から耳にしていても、それが何を意味するのか、正確に理解している人は多くありません。

以下では、倒産の意味を正しく理解し、会社の経営の継続が難しくなった場合に、会社のたたみ方としてどのような選択肢があり、どのようなことに気をつければよいのかをまとめました。

倒産とは?

「倒産」という言葉の意味

「倒産」という言葉は法律用語ではなく、明確な定義はありません。大手の信用調査会社では、次のような場合に「倒産」と評価しています。

①銀行取引停止処分を受けたとき

6か月以内に手形や小切手が不渡りとなり、銀行取引停止処分を受けてしまう場合です。銀行取引ができなくなると、会社の経営はほぼ不可能となりますので、この状態は事実上の倒産ということになります。

②会社の代表が倒産を認めたとき(任意整理)

会社が弁護士に倒産処理を依頼した旨明らかにしたような場合です。この時点では、後記ウのように裁判所が関与するかたちで処理をするかどうかは未定であることもありますが,金融機関や取引先等への通常の支払いができなくなっており、事実上の倒産ということになります。

③法的整理の手続きを裁判所に申し立てたとき

裁判所に,会社更生手続開始,民事再生手続開始,破産手続開始,特別生清算開始の申請をした場合です。法律に規定され,裁判所が関与する倒産処理手続を開始するという点で、法的な倒産ということになります。

また、「倒産」というと,会社がなくなってしまうようなイメージがありますが、倒産の手続きには、最終的に会社が消滅する清算型と,事業の継続を目的とする再建型があります。

事実上の倒産、法的な倒産の違い

会社の倒産は、「事実上の倒産」と「法的な倒産」に分類することができます。前述の
①銀行取引停止処分を受けたとき、②会社の代表が倒産を認めたとき(任意整理)は「事実上の倒産」に、③法的整理の手続きを裁判所に申し立てたときは「法的な倒産」に分類されます。

事実上の倒産から法的な倒産に移行することは珍しくなく、どちらも会社の通常の営業ができず、信用もなくなってしまっているという点では同じで、区別の実益はあまりないとも思われます。

しかし、法的な倒産の状態になると、裁判所が関与し、法律に定められた手続きによって処理され、会社の債権者が個別に債権の回収ができなくなるなど、利害関係者にも法的な影響が及びますので、注意が必要です。

また、会社の倒産に関連する各種手続きにおいて、事実上の倒産と法的な倒産で扱いが異なるということもあります。例えば,倒産した会社の従業員が、会社から賃金の支払いを受けられないため、未払賃金立替制度という政府の事業を利用しようとする場合にも、法的な倒産の状態になっていれば、破産管財人等が証明をすることで会社は倒産したものと扱われます。これに対し、事実上の倒産の状態だと、「中小企業について、事業活動が停止し、再開する見込みがなく、賃金支払能力がない場合」として、事実上の倒産であると労働基準監督署に認定を受けなければならないという違いがあります。

会社の倒産の現状

会社倒産の状況

会社の倒産には様々な原因がありますが、景気の悪化により売上や利益が下がることで資金がショートしてしまう不況型倒産が増えているようです。リーマンショックや東日本大震災など、経済への影響が甚大な出来事がきっかけとなり、経営状況が悪化してしまい挽回できないというケースが目立ちます。最近では、人件費が高騰していることから、コストが高くなるにとどまらず、人手の確保自体がままならず、事業の継続が困難となるケースもみられます。

中小企業の倒産でよくあるケース

中小企業の倒産でよくあるケース

中小企業や零細企業は、上記のような景気の悪化による外部環境の変化に対応できる経営資源や体力が大企業に比べて乏しいのが通常です。事業の構造を外部環境に適応させるにしても、環境が改善するまでやり過ごすにしても、相応の体力が必要となるため、持ちこたえることができずに倒産となるというケースが多く見られます。中には、社長が事業の継続の方針をぎりぎりまで維持した結果、会社の資金が流出してしまい、倒産の手続きに必要な費用も確保できないという会社もあります。

このような会社は、適切な倒産手続きをとることができないため、社長は夜逃げするしかなく、会社では取り付け騒ぎが起こるなど混乱が続くことになりますが、いずれは収束し、会社は登記簿上存続するだけの状態になります。このような状態になれば、手続費用も極めて低くなりますので、社長個人が債務の免責を受けるために、事実上の倒産から数年経ってから、社長個人と会社の破産申立てを行うというケースも少なくありません。しかしながら、事実上の倒産直後の混乱により、利害関係人は多大な迷惑を被ることになりますし、社長自身の再出発も大幅に遅れますので、やはり、会社が事業をストップするタイミングで適切な倒産手続きをしておくべきでしょう。

倒産を検討する際のポイント

会社の倒産をどの時点で検討すべきか

会社の規模や会社をとりまく環境によりけりで一概にはいえませんが、営業利益が赤字となる状態が続き、改善できる見込みが立たない場合には、資金繰りに余裕がある内に、選択肢のひとつとして検討しておいたほうがよいでしょう。営業中に倒産の手続きをとる場合にかかる費用は高額となる傾向があり、特に、再建型の手続きをとる場合には、手続きに必要な費用とは別に、手続きの開始からしばらくの間は借入れをせず、現金仕入れにより事業を継続しても資金繰りができるだけの運転資金が必要になります。

倒産を検討する時点での現預金の金額は、倒産手続きの選択肢の幅に大きく影響しますので、赤字が生じているにもかかわらず漫然と事業を継続し、手持ちの資金をすり減らしてしまう前に、検討を始めることをお勧めします。

会社の倒産について相談すべき相手は弁護士?税理士?

会社の倒産について相談すべき相手は弁護士?税理士?

多くの中小企業・零細企業にとって、会社を経営していくに当たり身近に相談できる専門家といえば税理士だと思われます。また、税理士は、会社の事業についての損益や資金繰りについても数字という観点からしっかりと把握していますので、会社がどの程度危機的な状況にあるのか、倒産の手続きを検討した方が良いのかについて、客観的な意見を述べてもらうことが期待できます。このように、会社の倒産手続きを検討すべきかどうかという点については、税理士に相談することは有益といえます。

しかしながら、税理士も、倒産手続きに関する法律や裁判所の運用等については詳しくないのが通常です。また、実際に倒産手続きをとる場合、会社の代理人となれるのは弁護士に限られています。そこで、税理士に相談した結果,倒産手続きを検討すべきだということになった後、具体的な倒産手続きの方針を決め、それに向けた準備に着手する段階になったら、倒産手続きに強い弁護士に相談すべきです。ただし、倒産手続きの方針を決めた後も、従業員の労務関係の手続き等も税理士に依頼している場合には、税理士の協力を得られると倒産手続きがスムーズに進められますので、税理士にお願いすべき事項について、予め相談しておくと良いでしょう。

倒産方法の選び方

上記のとおり、倒産手続きには再建型と清算型があり、また、裁判所が関与する法的な倒産手続きをとるかどうかという点も問題となります。

再建型の手続きを選択するには、次の条件を全て満たす必要があり、いずれかが欠けている場合には、原則として清算型の手続きをとることになります。

①営業利益が黒字となっていること

多少赤字が出ていても短期間に黒字化できる見込みがあることが必要です。本業で赤字のビジネスはそもそも続ける意味がなく、なるべく早く清算すべきだからです。

②当面の資金繰りができること

再建型といっても倒産手続きの一種である以上、会社の信用はなくなり、新たな融資を受けたり、掛けで仕入をしたりすることは原則としてできなくなります。手続きの中でスポンサーが現れて、資金の供給が行われるまで持ちこたえられるだけの運転資金が必要となります。

③社長に再建の意欲があること

会社が倒産手続きをとることで、債権者には多大な迷惑をかけることになります。それにもかかわらず、会社の再建のために債権者の理解と協力を得るためには、社長自らが過去の経営責任をとり、私財を投げ打ってでも会社を再建させたいという熱意と意欲は必須といえるでしょう。

これらの条件が整わないケースでは、清算型を選択せざるを得ません。また、法的な倒産手続きをとるかどうかについては、会社の事業内容や債権者の顔ぶれ等により専門的な判断が必要になります。この点については、倒産手続きを依頼する弁護士とよく相談して、最善の方法を選択しましょう。

まとめ

以上のとおり、会社の事業の継続が困難になった場合の倒産手続きには様々な種類があり、会社の状況に応じて適切な方針を選択することが重要です。そして、会社の資金に余裕があるほど選択肢の幅が広くなります。

会社を経営する社長であれば誰でも倒産は避けたいと考えるのは当然ですが、社長がどれだけ努力しても、経営環境の変化に対応が追いつかないという事態が生じるのは仕方のないことだと思います。そのような中で、利害関係人にかけてしまう迷惑が可能な限り小さくするために最も重要なのは、余裕があるうちに、専門家に相談をすることだといえるでしょう。

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