会社の経営には様々な専門家のサポートが必要ですが、会社の破産申立てについては、法律上、弁護士しか代理人になることはできません。会社と同時に経営者の方個人も破産する場合にも、経営者の方の代理人になれるのは弁護士だけです。
多くの会社には顧問の税理士がいて、経理や資金繰りなどに関することはもちろん、簡単な法律問題についても相談に乗ってもらっているという会社も少なくありません。しかし、破産申立ての代理は、税理士の仕事ではありませんので、破産申立てのサポートを依頼すべきという段階に至った場合には、弁護士に相談するしかないということになります。
目次
会社破産時の弁護士の役割
申立代理人である弁護士は、破産手続きの各段階において、社長をサポートする重要な役割を果たします。
破産申立てについての相談の段階
会社の状況について社長から聴き取り、決算書類などの資料を検討することで、破産申立てについて方針を立てます。特に、営業中の会社のケースでは、従業員や取引先といった利害関係人が多い上、資産の保全や拠点の明渡しなど、検討すべき要素が多く、スムーズに破産管財人に引き継ぐための初動は極めて重要です。
裁判所への申立て段階
裁判所への申し立てに必要な書類は、社長から情報や資料の提供を受けて弁護士が作成します。また、申立書類の提出も弁護士が社長に代わって行います。その際、裁判官に会社の状況を適切に説明し,事案に応じた開始決定と破産管財人の選任をしてもらいます。
破産手続開始決定後
破産管財人候補者との打合せに同行したり、破産管財人からの指示等に適切に対応できるよう社長をサポートします。
債権者集会
債権者集会には弁護士も同行し、債権者から質問があった場合には、社長に代わって回答することもあります。
会社の破産手続きには、法律や運用についての知識が必須で、申立代理人としての弁護士のサポートは不可欠といってよいでしょう。
会社破産を相談すべき弁護士の選び方
会社の破産申立ての相談は弁護士に相談すべきですが、どのような弁護士を選べばよいのかが問題となります。
会社の破産申立ては専門性の高い分野ですので、破産手続に関する知識・経験が豊富な弁護士を選びたいところですが、そのような弁護士が身近にいるという場合でなければ、インターネット等で探さなければなりません。
破産管財人に選任された実績があるかどうか
その際、一つの基準となるのが、破産管財人に選任された実績があるかどうかという点です。東京地方裁判所では、破産管財人を名簿に登録された弁護士から選ぶことになっていますが、この名簿に登録されるためには、弁護士としてのキャリアが3年以上あり、かつ、破産事件の申立代理人としての実績が相当数あることが必要です。つまり、破産管財人に選任されている弁護士は、破産手続について精通しているということができます。
弁護士・スタッフの人数は十分かどうか
また、営業中の会社の破産申立ては、緊急性が高い上、資産の保全等の対応が必要となることも少なくありません。そこで、弁護士・スタッフが少人数の事務所では対応が難しい場合もあるため、ごく小規模な会社でない限り、営業中の会社が破産申立てをする場合には、弁護士・スタッフの人数も事務所選びの一つの基準となるでしょう。
実際に会って相談してみて信頼できそうな弁護士かどうか
ただ、破産申立てに限らず、弁護士に依頼するかどうかは、実際会って相談をした上で、信頼できるかどうかが最も重要といえます。法律相談を無料としている事務所も多いため、上記の基準を参考に、これはという事務所や弁護士が見つかったら、相談の予約をとってみることをお勧めします。
会社破産を弁護士に依頼するメリット
適切な方針を立てて準備に入れる
会社破産の申立てにあたっては、初動の段階で、会社の状況に応じて必要な作業の見通しを立て、スケジュールを調整する等の方針を立てることが重要です。特に、営業中の会社では、従業員や買掛先等の利害関係人が多く、資金繰りや仕掛業務の状況等をみて、適切なタイミングで破産申立てをしなければ、混乱が生じてしまうことになります。
この点、破産手続の経験が豊富な弁護士に破産申立ての依頼をすることで、会社の状況に応じた適切な方針を立ててもらうことができ、会社として行うべき準備についても指導が受けられるというメリットがあります。
受任通知により取り立てがストップ、窓口になってもらえる
経営者の方にとって、金融機関や取引先からの催促に対応することは大きな精神的負担となるのが通常です。この点、弁護士に破産申立ての依頼をすると、債権者に受任通知を送ることになり、金融機関については、法律上、経営者への直接連絡が禁止されますので、以降は弁護士が窓口になります。また、他の債権者についても、弁護士からの受任通知があると、事実上経営者への連絡はしなくなる場合が多く、経営者の方としては、精神的な負担から解放された上で、破産申立てやその後の生活再建への準備をすることができるというメリットがあります。
ただし、営業中の会社のケースでは、敢えて受任通知を送らず、秘密裏に準備を進めて破産申立てをする場合もあります。具体的には、受任通知をすることで、仕掛中の業務に支障が生じたり、税務署等から差押えをされたりする等のリスクがある場合です。受任通知をするかどうかについては、依頼をした弁護士とよく相談し、方針を決めるとよいでしょう。その結果、受任通知をしないとした場合でも、依頼後は、債権者への対応も含めて弁護士から指導を受けることが期待できます。
費用面でのメリットもある
上記のように、弁護士に依頼するメリットがあっても、費用が高くなってしまうことが懸念されます。
この点、東京地方裁判所では、少額管財という運用がとられており、会社の破産では、申立時に必要な管財予納金が最低70万円であるところ、弁護士を代理人とすることで、最低20万円となります。しかも、経営者の方個人が会社と同時に自己破産をする場合にも、合わせて20万円となります。会社の規模や状況にもよりますが、少額管財となることを考えると、破産申し立てを依頼する弁護士費用を負担しても、総額としては割安となることが多く、費用面でのメリットもあるといえます。
申立後も免責を受けるまでサポートを受けられる
破産を申し立てた後も、経営者の方には破産管財人への協力義務があり、会社の状況によっては様々な残務処理に対応しなければならないこともあります。このような管財人への対応も、法的な問題がある場合には、申立代理人として弁護士がサポートすることになります。また、債権者集会には申立代理人も経営者の方と同席し、債権者からの質問等があった場合に、経営者の方に代わって対応することもあります。このように、申立後も、経営者の方が免責を受けるまでは弁護士が徹底してサポートをします。