会社の倒産が社長に与える5つの影響とその後の生活

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る
会社の倒産が社長に与える5つの影響とその後の生活

中小企業の社長が会社を倒産させる決断をせざるを得なくなったときでも、倒産により自分や家族にどのような影響があるのか、その後の生活はどうなっていくのかは、とても気がかりなことです。

もちろん、会社を倒産させることで従業員や取引先、金融機関など、多くの関係者に多大な迷惑をかけることになりますので、社長自身が全くの無傷で、これまでどおりの生活を維持できるケースはほとんどありません。

しかし、倒産の手続きを通して、借金から解放され、その後の生活を再建していくことは、決して難しいことではありません。倒産という言葉のイメージから、過度に重く受け止めて自暴自棄にならず、弁護士のサポートを受けて適切に倒産の手続きを進めることが重要です。

そのために、会社の倒産により社長が受ける影響について、知っておくべきことを以下にまとめました。

会社を倒産させた社長の責任

社長は“経営責任”として損害賠償請求を受けるのか?

社長は“経営責任”として損害賠償を受けるのか?

会社を倒産させた社長の責任として、“経営責任”という言葉がイメージされるかと思います。

しかし、法律上は、よほどの放漫経営をしていたのでない限り、経営に失敗したことを原因として社長やその他の役員が損害賠償責任を負う可能性は極めて低いといっていいでしょう。

ただし、会社の財産を意図的に流出させていたような場合は要注意です。社長が会社と同時に破産する場合には、免責(社長が借金を返さなくてもよくなること)を受けられなくなるおそれが生じます。

また、社長が個人としては破産をしない場合でも、破産管財人から多額の損害賠償請求を受けることになります。

このような事情がないのであれば、会社が倒産する場合でも、社長が“経営責任”を問われるのではないか、という心配はしなくても大丈夫です。

社長が心配すべき責任は会社の債務を連帯保証している場合

会社が破産した場合、社長が保証している債務については、ほぼ確実に履行を求められることになります。金融機関からの借入れや事務所の賃貸借契約、リース契約などによる会社の債務を連帯保証している場合に、個人として肩代わりしなければならないということです。

これを社長個人の財産で完済できないということであれば、社長個人としても自己破産を検討することになります。社長個人も自己破産をすることで、連帯保証分の借金を返済しなくてもよい状態にできるからです。

会社を倒産させると社長に借金が残るのか?

倒産の手続きの中で、裁判所から免責の許可決定を受けることで、社長は借金を返さなくてよいことになります。

ただし、借金が残ってしまう場合もあります。それは、以下の2つの場合です。

  1. 法律で免責を認めないとされている債権(非免責債権)がある場合
  2. 裁判所から免責不許可と判断されてしまう場合

法律で免責を認めないとされている債権(非免責債権)

法律上、一定の債務(借金)については、免責を受けられないこととなっており、これを非免責債権といいます。非免責債権は次のとおりです。

  • 税金、社会保険料等
  • 悪意(積極的に損害を与えようとする意図)で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
  • 故意または重大な過失により加えた人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権
  • 婚姻費用や、子供の養育費等
  • 個人事業として雇っていた従業員の給料等
  • 知っていたのに債権者一覧表に記載しなかった請求権
  • 罰金等

社長が個人として負担している債務で、上記のいずれかに当たると思われるものがありましたら、弁護士に相談してみるとよいでしょう。非免責債権に当たる場合には、倒産の手続後も支払いを継続する必要がありますので、その分も含めて生活再建の計画を立てる必要があります。

裁判所から免責不許可と判断されてしまう場合

法律上、一定の免責不許可事由に該当しなければ、免責が許可される仕組みとなっています。そこで、社長としては、免責不許可事由に該当する行為をしないよう注意することが必要です。主な免責不許可事由は次のとおりです。

  • 不当に財産を隠したり、壊したりするなど、減少させる行為
  • 不当に債務を負担したり、信用取引をして買った商品を換金する行為
  • 不当な偏頗弁済(一部の債権者にだけ返済をすること)
  • 信用不安があるのを隠して信用取引をする行為
  • 帳簿、書類その他の物件を隠したり、偽造・変造したりする行為
  • 裁判所や破産管財人に対して説明を拒んだり、虚偽の説明をしたりして、調査協力義務に違反する行為
  • 破産管財人の職務を妨害する行為

社長に借金を残さないためのノウハウ

社長に借金を残さないためのノウハウ

非免責債権がある場合、上記のとおり、その分の債務は残ってしまうことになるため、破産後も返済をしていかなくてはなりません。ただし、税金等については、金融機関の借入金の連帯保証等よりも優先して、破産管財人を通して支払われることになります。そこで、社長の個人資産の中で、後述の自由財産に該当しない財産がある場合には、これを浪費したりせず、確実に破産管財人に引き継ぐようにしましょう。

また、上記のとおり、非免責債権ではない債務についても、免責不許可事由があると債務が残ってしまうことになります。そこで、これに該当する行為は絶対にしないよう注意しなければなりません。会社の倒産のケースでは、取引先などに迷惑をかけたくないという動機から、特に不当に財産を隠したり、一部の債権者にだけ返済をしてしまうことで後々問題になることが多いです。しかし、それが原因となって免責が受けられないことになると、今後の生活の債権も困難となってしまいます。社長としては、手続きを依頼した弁護士の指導に従い、これらの行為を控えていただくよう、特に気をつけるべきでしょう。

会社を倒産させた社長の財産はどうなるのか?

会社が倒産し、社長自身も自己破産する場合、全財産を没収されてしまうと考えられてしまう方もいます。しかし、それでは今後生活していくことはできませんので、法律上、一定の財産は、破産管財人によって処分されずに、社長の手元に残しておけることになっています。これを“自由財産”といいます。

東京地方裁判所の運用では、法律上自由財産とされているものの他にも、次の財産については、原則として、破産管財人による処分の対象外とされています。

  • 99万円までの現金
  • 20万円以下の預貯金
  • 20万円以下の生命保険解約返戻金
  • 20万円以下の自動車
  • 居住用家屋の敷金
  • 電話加入権
  • 支給見込額の8分の1相当額が20万円以下の退職金
  • 支給見込額の8分の1相当額が20万円を超える退職金の8分の7
  • 家財道具
  • 差押えを禁止されている動産又は債権

注意すべきなのは、これらに該当するかどうかは、破産手続開始の時点で判断されるということです。破産申立ての準備をする際、社長の財産の一覧を提出する必要がありますが、その時点で預貯金が20万円であっても、破産手続開始の時点までに口座に入金があり、残高が20万円を超えてしまうと処分の対象となってしまいます。預貯金については、20万円を超えないよう余裕を持たせておき、破産手続開始までの入金予定も慎重に確認しておくべきでしょう。

倒産による社長の家族への影響

会社が倒産し、社長も同時に破産しなければならない場合、その家族への影響も大変心配なところです。

社長の家族も会社の借金を支払わなければならないのか?

会社や社長の債務を家族が保証していない限り、会社や社長が負っている借金を家族が肩代わりする義務はありません。

ただし、会社や社長から、不当に財産が流出しており、それが家族の財産となっている場合には、破産管財人から返還請求されることになります。

また、家族名義の不動産等を、会社や社長が借入れをする際の担保に入れていた場合には、その不動産が競売にかけられてしまいます。そこで、競売を避けるために、家族が会社や社長の借金を、債権者と協議して代わりに返済するというケースもあります。これらの事情がなければ、社長の家族が法的な責任を負うことはありません。

家族に及ぶ事実上の影響

ただし、社長が破産することにより、家族に事実上の影響が及ぶことは少なくありません。

第一に、引越しが必要になる場合があります。これは、会社の倒産という風評が立ち外聞が悪いという心情的な問題もありますが、社長の持ち家である場合には、破産管財人により売却されるのが通常であるため、引越しを余儀なくされることになります。また、会社名義で賃貸借契約をしていた場合には、社長や家族名義に変更できないと、会社の倒産により賃貸借契約も終了となるため、やはり引越しが必要となります。

第二に、自宅宛に会社や社長に対する請求書の送付や電話等により取立ての連絡が行われることがあります。債権者側の人間が自宅まで来るというケースもあります。債権者が貸金業者であれば、弁護士が債務整理を受任した旨の通知を送ると、法律上の規制により、以降は会社や社長に直接連絡することはなくなります。しかし、その他の業者についてはこのような法的な規制が及ばないため、弁護士が通知を送った後も、直接連絡が継続される場合もあります。自宅まで押しかけてきた、脅迫的な言動により取立てをする債権者がいる場合には、警察に相談することも検討すべきでしょう。

その他、家財道具まで差し押さえられて生活ができなくなってしまうのではないか、という心配をされる方もいますが、上記のとおり家族名義の財産であれば差し押さえられることはなく、社長名義の財産であっても、よほどの高価品でない限り、後記4.の自由財産に該当するのが通常であるため、処分される心配はないといってよいでしょう。

会社を倒産させた社長のその後

会社を倒産させた後の生活に関わる事項として、よくお問い合わせいただく項目について解説します。

再就職はできるのか?

会社が倒産することに伴い、社長は職を失いますので、生計を立てるために再就職する必要があります。倒産手続きとの関係では、社長の再就職についての法的な制限としては、まず、警備員、保険外交員等、一定の職業に就けなくなるという点が挙げられます。他の会社の役員になったり、もう一度自身が代表者となって会社を経営したりすることができなくなるのではないかと心配される方がいますが、そのような制限はありません。これまで会社を経営してきた経験を活かして、同業の知人が経営する会社の役員として再就職される方も少なくありません。

また、このような法的な制限の他にも、事実上、社長には破産手続きに協力する義務がありますので、特に営業中に会社が倒産したケースでは、残務処理のためしばらくの間新しい仕事をするのが難しくなる場合があります。最低1回は債権者集会に出席しなければなりませんが、期日は平日の日中に行われます。そこで、それまでに再就職できたとしても、期日に出席するために、仕事を休めるよう調整する必要があります。

クレジットカードは使えるのか?

会社の倒産と同時に社長も自己破産する場合には、信販会社が加盟する信用情報機関に登録されます。いわゆるブラックリストです。これに登録されている間は、審査が通らないのが通常なので、登録が抹消されるまではクレジットカードは使えないと考えておいたほうがよいでしょう。登録が抹消されるまでの期間については明らかとなっていませんげ、5年から7年といわれているようです。

ローンは組めるのか?

住宅や車をローンにより購入できるかについても、信用情報機関に登録されている間は難しいと考えるべきでしょう。ただし、安定した給料が得られる会社に就職している場合等、個別の事情によってはローンを組める場合もあるかもしれません。ただし、ローンが組めた場合でも、免責を受けてから7年間はもう一度破産して免責を受けることが原則としてできなくなりますので、ローンを組むことが可能となっても、実際に利用するかどうかは慎重に検討しなければなりません。

まとめ

以上のとおり、会社の倒産が社長や家族に与える影響について解説しました。依頼した弁護士の指導に従い、NGとされていることは絶対に控え、手続きに誠実に協力すれば、社長が免責を受けることは決して難しいことではありません。また、法律上許される範囲内で社長個人の財産を残して生活の再建を図り、家族への影響を最小限に食い止めるための手段も案外多くあるということがお分かりいただけたと思います。

会社の倒産はとても重大なことで、社長としては、関係者に及ぶ迷惑や、自分や家族の今後の生活のことで頭がいっぱいになってしまい、冷静な判断をすることは容易とはいえないでしょう。そこで、信頼のできる専門家になるべく早く相談し、会社の状況等、事案に即したサポートを受けることが、倒産に瀕した会社の社長にとって最も重要なことといえるでしょう。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

営業中の会社破産をご検討の方へ

苦しい資金繰りは会社破産で解決!
多くの経営者が再出発しています。

資金繰りに余裕があるうちに、会社の建て直しの見込みがあるかどうかという点も含めて、ぜひ一度お早めにご相談ください。

日比谷ステーション法律事務所では、適切なタイミングで、適切な手段を選択できるよう、経験の豊富な弁護士が無料にてアドバイスを行わせていただいております。

会社破産の実績多数。最短3日で申立ての実績あり。

弁護士の無料相談実施中!


03ー5293ー1775

SNSでもご購読できます。