会社が倒産したら従業員の給料・退職金は支払われないの?

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会社が倒産したら従業員の給料・退職金は支払われないの?

給料日なのに、通帳を確認してもお給料が振り込まれていない。おかしいと思って会社に問い合わせても、連絡がつかない。オフィスまで行ってみると、入り口には会社が倒産した旨の貼り紙がしてあった・・・。

営業中の会社が倒産するケースでは、このようなことも決して珍しくありません。会社の倒産には多額の費用がかかることが多く、給料を支払ってしまうとその費用を確保できないため、給料を未払いにせざるを得なくなるからです。では、未払いとなってしまった給料は、今後どうなるのでしょうか。以下、会社が倒産した場合の給料や退職金がどうなるかについて、従業員が知っておきたい事項をまとめました。会社の経営に不安を感じている経営者の方も、もしもの場合に従業員の方が可能な限り賃金の支払いを受けるため、以下を参考にしていただければと思います。

未払給料・退職金はどうなってしまうのか

給料・退職金を請求できる権利がなくなるわけではない

会社が倒産したからといって、給料や退職金を請求できる権利がなくなるわけではありません。会社が倒産すると、破産管財人という裁判所から選ばれた弁護士が、会社と同じ立場に立って権利関係の処理をしていくことになりますので、この破産管財人から支払いを受けるということになります。

会社にお金がないと実際に支払いは受けられない

会社にお金がないと実際に支払いは受けられない

ただし、当然のことですが、給料や退職金の支払いに充てるのに十分お金が会社に残っていて、これが引き継がれていないと、破産管財人も給料や退職金を支払うことができません。“ない袖は振れない”ということです。

破産手続開始直後に現金がない場合でも、破産管財人が会社の財産を現金化することでお金を確保できれば、従業員は未払賃金の支払いを受けられる可能性があります。具体的には、早めに大口の売掛金が入ってくるなどして十分な資金が確保できるケースです。そこで、会社の倒産に際し、十分な現預金を破産管財人に引き継げない場合には、会社の経営者としては、他に現金化のできる資産を整理・確保して、破産管財人に引き継げるよう、破産申立てを依頼した弁護士と共に準備しておくことが肝要です。

会社に十分な現金その他の財産がない場合は・・・?

会社に給料や退職金の支払いに充てるお金が残っておらず,現金化できる財産もない場合には、上記のとおり、管財人から支払いを受けることはできません。このような場合でも、未払賃金立替払制度という国の事業により、給料・退職金の一部については支払いを受けることができます。この制度について、以下詳しく解説していきます。

未払賃金立替払制度について

未払賃金立替払制度とは?

未払賃金立替払制度とは、会社が倒産して未払となっている賃金を、政府が会社に代わって立替払いする制度です。

倒産する会社には、当然のことながらお金がないことが多く、多くのケースでは、賃金の一部または全部が未払となってしまいます。また,破産管財人が会社の財産を処分しても、未払となっている給料を支払えるだけの資金が集まらないことも少なくありません。このような場合でも、未払賃金額の8割についてはこの制度により支払われることなり、国による事業のため、確実に支払いを受けられることから、会社の倒産に巻き込まれてしまった従業員にとってはとても心強い制度ということができます。

ただし、全ての会社の倒産のケースで立替払いが受けられるという訳ではなく、次の要件を充たす必要があります。

  • 会社が労働保険の適用事業で、1年以上事業活動を行っていたこと
  • 従業員が、倒産(破産申立日)の6か月前の日から2年の間に会社を退職したこと
  • 未払賃金の額などについて、破産管財人の証明を受けること

注意すべき点

資料が必要となること

未払賃金の額などについて、破産管財人の証明を受けるために、従業員が倒産した会社で実際に仕事をしていたことの根拠となる資料の提出が求められます。具体的には、賃金台帳やタイムカードなどです。近年、制度を悪用して不正に立替払いを受けるケースがあったことなどから、立替払事業を運営する側からのチェックも厳しくなっており、資料が不十分だと立替払いを受けられなくなる可能性があります。規模の小さな会社では、賃金台帳やタイムカードが整備されてないこともありますので、経営者としては、これらの資料をきちんと引き継げるよう備えておきたいところです。

役員を兼務している従業員について

未払賃金立替払制度により立替払いを受けられるのは、従業員という立場で会社から雇用されている方に限られます。取締役などの役員はこれに当たらず、倒産時に役員報酬が未払いとなっていても、立替払制度を利用することはできません。

この点、会社から従業員として雇用されていても、取締役のように役員として登記されているような、いわゆる役員兼務従業員の方は注意が必要です。役員兼務従業員は、役員としてとの登記があるという形式だけで未払賃金立替払制度の対象外と判断されることはありません。ただし、役員として登記されている以上、立替払いの対象となる従業員に当たるかどうかを慎重に判断されることになります。具体的には、職務権限や勤務時間の管理の有無,給与の額などといった、会社での立場や待遇から、実質的に役員ではなく従業員だと判断されれば、立替払いの対象となります。会社の倒産手続きの中では、破産管財人に上記の事情を説明したり、資料を提出したりする必要があるでしょう。

全ての未払賃金が支払い対象となるわけではない

倒産した会社から支払われるべき一切のお金が立替払制度の対象となるわけではありません。対象となるのは、退職日の6か月前の日から立替払請求をする日の前日までに支払期日が到来している給料と退職金に限られます。ボーナスは対象となりません。解雇予告手当や、会社の経費の立替分も、対象外です。また、給料であっても、未払金額が2万円未満の場合には対象外とされます。シフトが少ないアルバイトの方などは注意が必要です。

実際の運用

会社の倒産のケースでは、立替払請求は破産管財人により行われますが、破産管財人の就任直後は、会社の資産を保全するなど極めて多忙となるため、立替払請求の手続に速やかに着手できないことも少なくありません。また、上記のように賃金台帳等の資料の提出が必要ですが、その引継ぎがスムーズにできないことも、手続きを遅らせる原因となります。手続きが順調に進んだ場合でも、実際に立替払いが実行されてお金が振り込まれるまでには1か月はかかることが通常で、事案によっては3か月後となることもあります。いずれにしても、本来の給料日から入金までは相当長い期間が空いてしまいます。勤務している会社に倒産の兆候が表れたら、普段より多めに貯蓄をしておくことをお勧めします。

退職金の支払いのために中退共を利用している場合

会社が中退共(中小企業退職金共済事業)を利用して掛金を支払っていた場合には、従業員が退職いた場合、中退共から直接退職金が支払われます。会社からではなく、中退共からの支払いとなるため、会社が倒産した場合でも、支払いを受けられる金額に影響はありません。

同様の制度で、建設現場の従業員を対象とする建退共(建設業退職金共済制度)がありますが、こちらについても、会社の倒産によって影響を受けずに退職金が支払われることになります。

上記のとおり、会社が倒産した場合、未払賃金立替払制度が適用される場合でも、本来支払われる退職金の全額は保障されません。経営者として、従業員の退職金の支払いを確実にしたいということであれば、同制度の利用を検討されることをおすすめします。

まとめ

上記のとおり、会社の倒産に際し未払いとなった従業員の給料は、会社に十分な財産が残っている場合には支払われますが、そうでない場合には支払われず、未払賃金立替払制度による保護を受けることになります。その場合には、対象となる賃金については8割の支払いが受けられますので、会社が倒産しても、従業員の給料や退職金が全く支払われないということはありません。

ただし、会社が倒産した以上、本来の給料日に給料が支払われるのは極めてまれなケースであり、最終的に全部または一部の支払いが受けられるとしても、少なからず時間がかかってしまうのが通常です。そうなると、家計の資金繰りに直接大きな影響を受けることになりますので、入金までの期間をしのぐに足りる貯蓄をしておくなど、従業員側でも対策をしておきたいところです。また、会社の経営者としても、少しでも早く従業員が賃金の支払いや立替払いを受けられるよう、日頃から資料の作成をしっかりしておくとともに、万が一の場合には、管財人に財産や資料をスムーズに引き継げるようにしたいところです。

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