遺産を相続すると、相続税がどれくらいかかるのか、高額となる場合には、どのように納税資金を確保するかという点が心配になりますが、相続に伴う出費は税金だけではありません。遺産分割を行う場合には、相続人間の意見の対立の度合いや、相続財産の内容等の事情にもよりますが、予想以上にお金がかかることが少なくありません。そこで、遺産分割にはどれくらいの費用がかかるのかについて、ある程度見通しが立てられるようにしたいところです。
遺産分割にかかる費用は、大きく分けて、
- 手続にかかる費用(実費)
- 弁護士に依頼した場合の弁護士費用
の2つとなります。
本記事ではこの2つの費用ついて、詳しく解説します。
目次
遺産分割事件の手続にかかる費用
交渉
内容証明郵便を送付する場合には、2,000円前後かかります。
それ以外に、交渉をする際に必ず必要になる費用はありませんが、遺産分割協議書を作成する際は、印鑑証明書を添付しますので、その分の費用がかかります。印鑑証明書の発行手数料は、自治体によって異なりますが、1通当たり300円前後です。
調停
遺産分割調停の申立てをする際、被相続人1人につき、収入印紙1,200円分が必要となります。
これに加え、郵便切手を予納しなければなりませんが、額面については各裁判所により運用が異なり,内訳も細かく指定されていることがありますので,申立てを行う裁判所に確認しましょう。
なお、東京家庭裁判所では、3,290円分とされており、内訳は
- 82円×10枚
- 50円×40枚
- 20円×10枚
- 5円×10枚
- 2円×10枚
と指定されています(2017年8月現在)。
調停の申立てまでは上記の費用で行うことができますが、注意が必要なのは、不動産や非上場株式の評価が必要となった場合の鑑定費用です。不動産の評価額にもよりますが、100万円を超える金額となることも少なくありません。この鑑定費用は、法定相続分に従い各相続人が予納するのが原則です。鑑定は絶対にしなければならないというわけではなく、各当事者が不動産業者の査定書をとり、その評価額を参考にする等して合意できれば不要となります。評価額についてどうしても合意ができない場合に、鑑定で決めるということになるのです。
上記のとおり、調停申立て自体の手続費用はそれほど高額ではありませんが、鑑定費用はそれもよりもはるかに高額となるのが通常です。不動産等の評価が主要な争点となっているケースでは、話合いで評価額の合意をすることは中々難しいかもしれませんが、鑑定まで行う場合には、費用が予想よりも高額となることも考慮し、方針を決めるようにしましょう。
審判
調停が成立しない場合には、手続は審判に移行します。
この場合には、追加の費用はかかりません。
遺産分割事件の弁護士費用
弁護士費用の相場は?~旧日弁連費用等基準について
遺産分割事件の弁護士費用に相場というものはあるのでしょうか。
かつて弁護士の費用については「日弁連報酬等基準」という基準が定められており、その範囲内で弁護士費用が決められていましたが、平成16年4月からはこの基準が撤廃され、弁護士費用は自由化されています。そのため、完全成功費用制等、弁護士事務所毎に独自の費用体系が定められるようになりましたが、多くの事務所では、遺産分割事件に限らず、弁護士費用について旧日弁連報酬等基準(以下「旧基準」といいます。)を踏襲しています。そこで、この旧基準が、弁護士費用の“相場”としてある程度参考になるといえます。
旧基準によると、遺産分割事件の弁護士費用は次のとおりとなります。
着手金
経済的利益の額 | 着手金 |
---|---|
300万円以下の場合 | 8% |
300万円を超え3,000万円以下の場合 | 5%+9万円 |
3,000万円を超え3億円以下の場合 | 3%+69万円 |
3億円を超える場合 | 2%+369万円 |
成功報酬
経済的利益の額 | 成功報酬 |
---|---|
300万円以下の場合 | 16% |
300万円を超え3,000万円以下の場合 | 10%+18万円 |
3,000万円を超え3億円以下の場合 | 6%+138万円 |
3億円を超える場合 | 4%+738万 |
弁護士費用は、着手金+成功報酬が基本となっており、その他日当等の費用がかかります。以下、それぞれについて、遺産分割における弁護士費用の特徴を解説します。
着手金
着手金とは、まさに弁護士が依頼された仕事に着手する際に支払いを受ける弁護士費用のことです。遺産分割事件に限らず、着手金は、事件の処理がうまくいってもいかなくても、依頼者に返還しないのが通常です。
遺産分割事件では、旧基準によると着手金の額が大きくなってしまう傾向があります。遺産を相続した後であればともかく、相続する前にそれだけの着手金を支払える方はそれほど多くありません。そこで、最近は、着手金については旧基準によらず、一律の金額を定めている事務所が増えているようです。
ここで注意したいのが、追加の費用が発生しないかという点です。
遺産分割事件は、交渉→調停→審判という順番で進みますが、解決まで着手金の金額が一律なのか、調停や審判の段階に進むと追加費用が発生するのかについて、よく確認しておきましょう。
成功報酬
成功報酬とは、弁護士が依頼された仕事が成功した場合に限り支払いを受ける弁護士費用のことです。多くの場合には、依頼者が得た経済的利益の何%というかたちで定められています。
遺産分割事件では、着手金は低めの一律金額としていても、成功報酬については旧基準と同様にしている事務所が多いようです。
また、旧基準のように経済的利益の額が増えるのに応じて割合が低くなるのではなく、常に一定割合とする事務所もあります。
着手金と異なり、成功報酬は遺産の取り分が手元に入ってきてから支払うことになりますが、特に遺産が大きい場合には成功報酬の見込額を意識しておきたいところです。遺産が大きいケースでは、成功報酬の額に上限を設けている事務所もありますので、依頼する前によく確認しておくとよいでしょう。
その他の費用
着手金や成功報酬のほかにかかる費用としては、弁護士が遠方に出張する際の日当です。
これも、旧基準では半日だと3万円以上5万円以下、一日だと5万円以上10万円以下と定められていましたが、現在では出張する場所によって細かく分類するなど、事務所によって独自の基準が定められています。
遺産分割事件は長期化することも珍しくなく、調停等の期日が多くなると、日当の金額が予想以上に大きくなることもあります。
そこで、契約上日当が発生する場合には、依頼する際に、遺産の種類や争点等を正確に弁護士に伝え、どれくらいの期間がかかりそうか、見込みを確認しておくとよいでしょう。支払時期についても、依頼時にある程度予納するのか、解決時に成功報酬と一緒に支払うのか、併せて確認しましょう。
日当が発生する場合には、出張の際の交通費等の実費も依頼者の負担となるのが通常です。その際の交通手段、具体的にはタクシーやグリーン車等の使用の条件についても、出張の回数によっては予想以上に大きな金額となる場合がありますので、チェックをしておくことをおすすめします。
日比谷ステーション法律事務所の弁護士費用
最後に、日比谷ステーション法律事務所の弁護士費用をご紹介いたします。
着手金
項目 | 費用 |
---|---|
法律相談料 | 初回無料(※) |
着手金 | 一律 40 万円 |
調査 | 無料 |
交渉 | 無料 |
調停 | 無料 |
審判 | 一律 20 万円 |
(※)2回目以降は30分ごとに5,000円(税抜)となりますが、受任契約締結後は発生しません。
日比谷ステーション法律事務所では、着手金は一律40万円に設定し、審判が行われない限り追加の費用負担はありません。また、このように、遺産分割をご検討している方が、安心してご依頼できるよう、できる限り弁護士費用の内訳を明示しています。
成功報酬
経済的利益の額 | 成功報酬 |
---|---|
300万円以下の場合 | 16% |
300万円を超え3,000万円以下の場合 | 10%+18万円 |
3,000万円を超え6,000万円以下の場合 | 6%+138万円 |
6,000万円を超え3億円以下の場合 | 498万円 |
3億円を超える場合 | 498万円 |
日比谷ステーション法律事務所では、成功報酬の上限を498万円とし、6,000万円を超える部分については成功報酬はいただいておりません。
成功報酬の上限を設けることで、遺産が高額になるほどリーズナブルになり、遺産が高額の方でも安心してご依頼頂けます。
まとめ
現在はそれぞれの弁護士が独自に費用体系を定められますので、自分のケースでは弁護士費用の総額がどれくらいになるかを正確に理解した上で、旧基準と比較するようにしましょう。例えば、着手金が自分のケースでは旧基準に比べて低くてお得感があったとしても、成功報酬の割合が高く、総額では割高になってしまうという場合があります。
以上のとおり、遺産分割には、手続費用と弁護士費用がかかり、いずれについても、予想よりも高額な費用を負担することになってしまう場合があります。特に、弁護士費用については、依頼する弁護士により費用の基準が異なり、解決までにどれくらいの金額になるのか。予測するのが難しいのが実情です。そこで、依頼する前の相談段階で、自分のケースで遺産分割が無事解決した場合を可能な限り詳しく想定してもらい、それに基づいて総費用の見込みがどれくらいになるかを説明してもらい、納得できたら依頼するようにするとよいでしょう。