遺産分割の手続きは、相続に関する難しい法律の知識が必要となるため相続人だけで処理するのは容易ではありません。また、弁護士に相談したいとなっても、インターネット上には膨大な数の弁護士の情報があり、候補を絞り込むだけでも大変な作業となります。そこで、専門家である弁護士に相談するとどのようなメリットがあるのか、遺産分割を相談すべき弁護士の探し方・選び方について解説します。
目次
遺産分割を弁護士に依頼する3つのメリット
話し合いや裁判所での手続を任せられる
遺産分割は、相続人間での交渉、裁判所での調停、審判という流れで進んでいきますが、特に裁判所での手続は平日の日中に裁判所へ出向く必要があり、1回当たりの拘束時間も1時間以上となるのが通常で、事案によっては解決まで10回以上出席しなければならないこともあります。しかも、期日間に資料の収集等の準備が必要となる場合もあります。このような手間暇を、仕事とば別に負担して最後まで手続を履行するのは難しいといわざるを得ません。
弁護士に依頼することで、このような期日への出席や裁判所から指示された準備等を、全て弁護士に任せることができます。
相続分の最大化が期待できる
遺産分割は、手間暇がかかるだけでなく、適正な解決には高度な専門知識も必要となります。調停や審判のように手続が裁判所に移った場合はなおさらです。調停や審判も本人で対応することは可能ですが、事案によっては裁判所から弁護士を代理人とするよう勧告されることも珍しくありません。これは、手続を円滑に進めるためだけでなく、争点毎に適切な対応ができるかどうかが、実際に獲得できる相続分に影響するからです。対立する相続人に弁護士がついており、こちらにはついていないという場合は、弁護士費用にもよりますが、弁護士に依頼することを積極的に検討するべきでしょう。
対立する親族と顔を合わせるストレスから解放される
遺産分割の特徴のひとつに、親族同士が当事者となって争うという点が挙げられます。もともと仲が良かったのに、相続をきっかけに骨肉の争いになってしまうというのも珍しいことではありません。このような当事者間で紛争を続けることは、赤の他人と争う場合に比べ格段に大きなストレス要因となるのが通常です。
そこで、弁護士に手続の代理を任せることで、対立する親族と顔を合わせることが一切なくなります。相手方が親族であることによる精神的な負担が完全にフリーになります。
弁護士に依頼すべき場合、依頼しなくてもよい場合
前記1.弁護士に頼むメリットで解説したとおりのメリットがない場合には、依頼しなくてもよいということになります。つまり、相続人間での争いがほとんどなく、話合いでの解決が期待できるようなケースでは、むしろ弁護士がいない方が、スムーズに進められる場合があるかもしれません。
逆に、上記のようなケースでなければ、弁護士を依頼すべきということになります。相続人間での話合いができない場合には調停等、裁判所での手続が必要になりますが、これが難しいことについては、前記1.弁護士に頼むメリットで説明したとおりです。また、相手方が弁護士を代理人に立ててきた場合には、やはり専門家と闘っていくのは分が悪いのが通常ですので、こちらも弁護士に依頼すべきでしょう。
弁護士の探し方
弁護士に依頼すべきだとして、依頼する弁護士を探すにはどうすればよいのでしょうか。
身近に弁護士がいないという場合には、インターネットで探すのが最も簡単かつ効果的です。多くの法律事務所ではホームページを作成しており、取扱分野や実績等を掲載していますので、それを参考に相続に強そうな弁護士を探すとよいでしょう。
また、相続に強い弁護士を集めたサイトもあり、その中から探すという方法もあります。ただし、このようなサイトの中には、サイトの運営会社により高額な掲載料を払う弁護士が優先的に閲覧されるようにしているものもあるようです。
そこで、後述の弁護士の選び方を参考に、サイト上の情報を吟味し、相談の予約を入れることをおすすめします。
弁護士の選び方
遺産分割の経験・実績
やはり、経験・実績の豊富な弁護士は、それだけ遺産分割事件に精通しており、ノウハウも蓄積しているでしょうから、遺産分割に強い弁護士といえるでしょう。
ただし、守秘義務との関係で、解決実績を公開するのを控える弁護士もいますので、サイトに解決実績がないからといって、直ちに経験が豊富でないとの判断はできません。また、ただ単にサイトの更新をしていないだけという場合もあるでしょう。
サイト上の解決実績は、弁護士の経験や実績を判断するための一要素として考えるべきでしょう。
実際に会ってみて受けた印象
インターネット等で探した結果、これはという弁護士が見つかったら、相談の予約を入れてみましょう。
ホームページに弁護士の写真を掲載している事務所も多いですが、実際に会って話をしてみると印象が大きく違うこともあるでしょう。人柄がいい弁護士が必ずしも優秀というわけではありませんが、あまりに横柄だったり、冷たい感じがするということでは、信頼関係を構築することは難しく、依頼中も連絡をとるのが億劫になってしまったり、成果にも不満が残ったりということになりかねません。
弁護士選びには、人間としての相性も意外と重要です。この点は直接会って確かめてみるほかないでしょう。
弁護方針に納得ができるか
遺産分割に限らず、弁護士との初回法律相談では、事情を説明し、現在生じている問題をどのように解決するか、着地点はどの当たりになるのかといった見通しを示されることがあります。このような弁護方針を初回法律相談時に明確に示してくれて、かつ、それに納得できるのであれば、その弁護士に依頼することを前向きに考えてよいでしょう。
逆に、弁護方針が今ひとつ納得できなかったり、こちらの要望を頭ごなしに否定して弁護士の方針を押しつけてきたりするようであれば、依頼は見合わせた方が無難です。
弁護士費用がサービスに見合うか
弁護士費用がどれくらいになるかは重大な関心事です。弁護士費用については、別稿「遺産分割にかかる費用を詳細解説!気になる弁護士費用はいくら?」で詳しく解説しておりますが、弁護士報酬は現在自由化されており、法律事務所毎に独自の報酬体系を定めています。
そこで、遺産分割事件について弁護士に依頼し、無事遺産の取り分を確保できた場合に、報酬がどれくらいの見込みになるかについては、依頼する前によく弁護士に確認しておくことが重要です。その上で、弁護士報酬も含めた総費用が、サービスと見合うものであると納得してから正式に依頼するようにしましょう。
まとめ
以上のとおり、遺産分割にあたって、相続人間でもめてしまうようであれば、弁護士に依頼するのが得策といえます。話合いでの解決は困難で、そのまま続けても時間が経過してしまうだけだからです。当事者だけでの解決が難しいと思ったら、迷わず弁護士探しを始めましょう。
弁護士を選ぶ際には、実際に相談をしてみないと判断できないことも多いため、インターネットで探してある程度絞り込んだら、積極的に法律相談してみることをおすすめします。