遺留分減殺請求の流れと手続きにかかる費用

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遺留分減殺請求の流れと手続きにかかる費用

遺留分を取り戻すために必要な遺留分減殺請求の手続きについて、知っておきたい知識について詳しく解説します。

遺留分とは何か?遺留分減殺請求の時効と効果も併せておお読みいただくとより理解が深まります。

遺留分減殺請求の流れ

内容証明郵便の送付・交渉

まずは、相手方に内容証明郵便を送る

遺留分の返還を受けるために必要な手続の第一歩は、返還請求をする相手方、例えば、遺言で全ての遺産を相続することになっている相続人等に対し、内容証明郵便を送り、遺留分減殺請求をすることを明示することです。その上で、まずは交渉を始めることになりますが、内容証明郵便を使うという点が、大変重要なポイントとなります。

なぜ内容証明郵便でないといけないのか

遺留分減殺請求の権利は、1年という短い時効期間が設定されており、この時効期間を過ぎてしまうと、相手方から、時効のため請求できないとの反論をされてしまうおそれがあります。これを防止するには、1年の時効期間内に遺留分減殺請求をしたことを証拠として残しておく必要があります。内容証明郵便は、送った文書と同じものを郵便局が保管し、証明してくれるという点で、証拠としての価値が極めて高いものです。裁判でも、遺留分減殺請求をしたことの証拠として内容証明郵便を提出すれば、相手方から時効であるとの反論を受けることはほぼなくなるでしょう。

相手方の反応をみて、交渉を始める

内容証明郵便が相手方に届いてから、相手方が交渉に応じるのであれば、話合いによる解決が期待できます。双方納得のできる解決案がまとまる見込みとなったら、後で蒸し返されることがないよう、どのように遺留分を返還するのか、具体的には、価格賠償であれば、金額や支払時期等を明記した示談書等を作成するようにしましょう。

調停

相手方が交渉に応じなかったり、減殺の対象となる物件の評価等をめぐり妥協点が見つからなかったりする場合には、交渉での解決は困難といわざるを得ません。この場合には、裁判所を使った手続をとることになります。

裁判所を使った手続は、調停と訴訟がありますが、まずは合意による解決を目指す調停という手続をとる必要があります。調停は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所に申立書類を提出することで手続が始まります。申立書類に不備がなければ、調停の期日が指定されますので、指定された日時に家庭裁判所へ出頭し、調停員を交えて相手方と話合いが行われます。といっても、相手方と面と向かって話合いをすることはなく、双方が交互に入れ替わり、調停委員に言い分を伝えるという流れで進みます。

こうした期日が数回にわたって重ねられ、妥協点が見つかれば調停が成立しますが、そうでない場合は、調停は不成立となります。そうすると、次の段階として、訴訟を提起することになります。

訴訟

訴訟は、相手方の住所地または被相続人の最後の住所地を管轄する地方裁判所に訴状その他必要書類を提出し、訴えを提起することで手続が始まります。訴訟は、調停とは異なり、話合いでの解決を目指すものではなく、権利があるかどうかを、裁判所が証拠によって判断するものです。ただし、訴訟の段階になっても、和解というかたちで合意により解決となる場合もあります。

訴状や必要書類に不備がないと、第1回期日が指定されます。その後も第2回、第3回と期日が重ねられ、主張の整理や証拠調べが行われ、判決という流れとなります。

判決の内容に不服のある当事者は、高等裁判所、最高裁判所と上訴することができますが、上訴をしないと判決が確定し、相手方が判決で認められた遺留分の返還をしないと、強制執行をすることになります。ただし、遺留分減殺請求のケースでは、強制執行が必要になるケースはあまりないといってよいでしょう。

遺留分減殺請求にかかる費用

内容証明郵便、調停等の実費

内容証明郵便の送付にかかる費用は、枚数にもよりますが、2000円前後となるのが通常です。

調停の申立てには、収入印紙1200円分と、郵便切手の予納が必要になります。郵便切手については、裁判所毎に運用が異なることがありますので、調停を申し立てる家庭裁判所に確認が必要です。東京家庭裁判所では、1006円分(内訳:100円×2枚、82年×8枚、10円×14枚、1円×10枚)とされています(平成29年9月現在)。

訴訟の提起にかかる手数料は、遺留分減殺請求による減殺分の金額が基準となり、これに応じて必要な収入印紙が定められています。金額が大きくなるほど、費用も大きくなる傾向があります。

例えば、減殺分の金額が500万円であれば3万円、1000万円であれば、5万円、1500万円であれば6万5000円、2000万円であれば8万円となります。

これに加え、郵便切手の予納も必要であり、裁判所毎に運用が異なる場合があることは調停の場合と同様ですが、東京地方裁判所の場合には、6000円分(内訳:500円×8枚、100円×10枚、82円×5枚、50円×5枚、20円×10枚、10円×10枚、2円×10枚、1円×20枚)とされています(平成29年9月現在)。

弁護士費用

弁護士費用については現在自由化されており、事務所毎にさまざまな報酬基準が定められていますので、依頼をする前の法律相談時によく確認しておきましょう。

弁護士報酬は、大きく分けると、依頼時に支払う着手金と、事件終了時に支払う成功報酬になります。遺留分減殺請求事件では、着手金については20万円から50万円の定額、成功報酬については、遺留分として獲得できた金額に一定割合をかけて算出するということにしている事務所が多いようです。また、手続の段階に応じて、着手金が加算すると定めている事務所もありますので、訴訟まで必要となるようなケースでは注意が必要です。

弁護士報酬については、遺産分割のケースに関する別稿「遺産分割にかかる費用を詳細解説!気になる弁護士費用はいくら?」にて詳しく解説しております。遺留分減殺請求のケースでも、弁護士費用については遺産分割のケースとほぼ同様の基準としている法律事務所が多いです。

遺留分減殺請求で解決が困難になる場合

遺産の範囲に争いがある

遺留分の額は、遺産に対して一定の割合をかけて算出しますので、遺産として何が、どれくらいあるのかという点は極めて重要です。不動産等、運んだり隠したりするのが難しい財産ではあまり問題となることはありませんが、現金や貴金属等については、同居している相続人がこっそり自分のものにしているのではないか、という疑いが生じるケースが少なくありません。

そのような場合でも、裁判所が積極的に遺産を探してくれることはありません。特定の財産が遺産に含まれるということについて、それを主張する当事者が証拠を集めて立証する必要があります。

特に、相続の前後で多額の現預金が流出していたような場合には、その現預金がどこに、どのような原因で流出したのかを明らかにし、それが遺産に含まれるかどうかを判断する必要がありますが、このような問題があるケースでは、遺留分の額に直接影響する問題であるため、当事者間の争いが深刻となり、解決まで時間がかかることになるのが通常です。

不動産等、評価に争いがある

遺留分減殺の対象が現預金のみであれば、返還する金額の計算が明確かつ容易なため、早期解決できる可能性が比較的高いといえます。

これに対し、遺留分減殺の対象に不動産等の評価が必要になるものがある場合には、返還をする際の価格賠償の計算に直接関係しますので、深刻な争点となるのが通常です。不動産については、路線価や各当事者が取得した不動産業者の査定書等を参考に、合意によって評価額を決定することもありますが、これが難しい場合には裁判所が選任する不動産鑑定士による鑑定が行われます。

この鑑定の費用は当事者の負担となりますが、100万円を超える金額となることも珍しくありません。遺留分の金額にもよりますが、どこまで評価を争うかについては、費用対効果の問題も考慮する必要があります。

まとめ

以上のとおり、遺留分減殺請求により財産を取り戻すには、まず、時効とされないように内容証明郵便を相手方に送ることが重要となります。その後、交渉や調停等の手続を経ることになりますが、特に、遺留分減殺請求で解決が困難になる場合に該当するようなケースでは、調停や訴訟が必要になる場合が多いため、専門家である弁護士に依頼することをおすすめします。その際にかかる弁護士費用については、依頼する事務所によって金額や支払方法等が異なりますので、委任契約を結ぶ前によく確認しておきましょう。

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